2016年02月22日

トランプ陣営がサウスカロライナ勝利で抱えた難題とは?

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ニューハンプシャー州・サウスカロライナ州でのトランプ勝利の先にあるもの

サウスカロライナ州の予備選挙でトランプ氏勝利、代議員獲得数で67となって2位以下を大きく突き放した格好となりました。リベラルなニューハンプシャーと保守的なサウスカロライナの両州を制したことでトランプ氏の実力は如何なく証明されたものと思います。

通常の予備選挙であれば決着がついたと言える状況ですが、今回の共和党予備選挙は極めて歪な権力構造が入り乱れており、このままトランプ氏の指名決定ということにはストレートにはならないものと思われます。それどころか、サウスカロライナ州の結果はトランプ氏の選挙戦略に影を落す結果となったと言えるかもしれません。

トランプ陣営の基本的な選挙戦略である「構図」への修正圧力 

ドナルド・トランプ氏の選挙戦略は極めて明快であり、「トランプVSそれ以外」という演出を徹底することにあります。そして、メディアの話題の中心を常に自分に集中させることによって、他候補者への関心を分散させて票を散らせるというやり方です。

トランプ氏の選挙戦略は「一人を選ぶ」選挙において極めて有効な戦略であって日本でも実行されることがあります。全ての対立候補者に自分を批判させることによって露出機会を確保して一定の支持層を固めて勝利に滑り込むということが狙いです。対立候補者やメディアが「トランプ」という言葉を口にするだけで良い宣伝になるわけです。

最も顕著な出来事として、トランプ氏がアイオワ州の党員集会直前でのディベートをボイコットして、ディベート会場から直ぐ近くで退役軍人へのチャリティーを主催してみせたことが挙げられます。トランプ抜きの討論会は盛り上がりに欠けており、トランプ氏は誰が予備選挙の主役なのかを明確にしてみせたと言えます。

しかし、サウスカロライナ州予備選挙を受けてトランプ氏の選挙戦略に修正を加える変化が発生しました。それはジェブ・ブッシュ氏の撤退とマルコ・ルビオ氏の台頭です。この事態は元々想定されていたものでしたが、ジェブ・ブッシュ氏のキャンペーンが予想よりも下手くそであったこと、マルコ・ルビオ氏のキャンペーンが巧みであること、によって選挙戦を左右するスーパーチューズデーよりも前段階でトランプ氏にとって不都合な状況変化が起きたと思われます。

ちなみに、日本の有識者らは昨年ブッシュが大統領候補として有力と述べていた人々ばかりであり、今となってはどれだけいい加減な人々であるか証明される結果となりました。筆者はマルコ・ルビオ氏については日経ビジネスオンラインで2012年段階から共和党内で台頭することを明言し、2016年予備選挙はトランプ氏VSルビオ氏の構図になることは早くから指摘しています。

メディアは自然な流れとして、トランプ・クルーズ・ルビオの三つ巴として報道

サウスカロライナ州の予備選挙以後に増えた言葉は「3つ巴」です。つまり、トランプ、クルーズ、ルビオの3名が同列に並べられてメディア上で語られるようになっています。また、有権者の基本認識としても、アウトサイダーのトランプ、保守派のクルーズ、主流派のルビオ、という三国志状態でインプットされていることは間違いありません。

そして、このような状況こそがトランプ氏が最も恐れていた状態であるということが言えるでしょう。つまり、トランプVSそれ以外であればトランプ氏は常に1位であり、場合によっては各州からの代議員の過半数を取得することも可能であったかもしれません。しかし、実際にはトランプ氏を支持者は全体の30%前後で固定化しており、全体の50%以上の支持を獲得することは困難な状況です。

その結果として、3つ巴という認識が有権者に刷り込まれると、トランプ30、クルーズ30、ルビオ30のように誰も過半数を取ることができなくなります。そして、党大会で第一回投票で代議員の過半数を獲得できる候補者がいなかった場合、第二回投票である1位と2位の決選投票に持ち込まれることになります。

このような状況になると、共和党の政界要人らの影響が増加して、彼らからの支持を得ていないトランプ氏は苦しい立場に立つことになるのは明白です。要は3つ巴という状況はトランプ陣営にとって最も望ましくない状況だと言えるでしょう。

ルビオの選挙戦略の巧みさが目立つ序盤戦、予備選挙の戦いは中盤戦に突入へ

サウスカロライナ州予備選挙直前、ルビオ氏は隠し玉ともいえるエンドースメントを発表してブッシュ・ケーシックなどの他主流派候補者を突き放すとともに、クルーズ氏を差し切って得票率2位の座を確保しました。

そのエンドースメントとは昨年12月で州内の共和党内から81%の支持を獲得する人気のサウスカロライナ州知事からのエンドースメントです。ニッキー・ヘイリー知事は保守派からも絶大な人気を誇る女性知事であることから、州経営の実績・保守派からの決定的支持などが不足しているルビオ氏にとっては良いパートナーとなるため、副大統領候補者としても名前が挙がっています。

そして、ネバダ州党員集会を前に、同州のキーパソンである上院議員からエンドースメントを確保し、その推薦理由として「次世代の保守リーダーであること」を挙げさせるなど、保守派のテッド・クルーズへの運動への打撃を与える巧みさを披露しています。マルコ・ルビオは場面によって主流派と保守派の使い分けを行うことで、着実にトランプ・クルーズへの優位を確立しつつあります。


3月1日のスーパーチューズデーでは何に注目するべきなのか?

スーパーチューズデーでは合計595人の代議員から指名の行方が決まることになります。現在、トップのトランプ氏の代議員獲得数が67であることを考えると、スーパーチューズデーのインパクトの大きさが理解出来ます。

今年のスーパーチューズデーは、ジョージア76、オクラホマ43、テネシー58、アラバマ50、コロラド37などの2012年に保守派のサントラム・ギングリッジが勝利した州が多く、クルーズの地元であるテキサス州155が入っていることなどが特徴です。つまり、保守派が獲得可能な州の代議員総数は合計419ということになります。

特に上記の保守派にとって実績がある各州でクルーズ氏がそれらの州のうち幾つでトップを取ることができるのか、という点が最大の見どころとなります。トランプ氏が全米支持率は1位を保っている中で、地元テキサスにおける勝利はクルーズ陣営としては必須項目となります。

仮にテキサス州でクルーズ氏が敗れることがあれば、トランプVSルビオの構図に絞り込まれることになり、テキサス州でクルーズが勝利した場合三つ巴の状況が続くことになると推測されます。

3月2日~5日に開催されるCPACによる模擬投票で予備選挙見通しが決まる

3月2日~5日までワシントンのナショナルハーバーで全米の共和党保守派数万人が結集する大会であるCPACが開催されます。CPACでは全ての大統領候補者が演説を行った上で、保守派のリーダーたちによって誰が最も大統領にふさわしいのか、という模擬投票が行われます。

共和党大統領予備選挙においてCPACの上記投票は決定的な意味があり、2012年に主流派と見られていたロムニー氏が保守派のサントラム氏に模擬選挙で勝利したことで予備選挙の決定的な流れが決まった経緯もあります。その際、ロムニー氏は自分がいかに「保守」であるのかということを会場の聴衆に向かって必死にPRしていたことが印象的でした。CPACに一度も足を踏み入れたことがない日本人有識者は米国共和党関係者にとってはモグリだと言っても過言ではありません。

予備選挙の展開が、トランプVSルビオに絞り込まれるのか、それとも三つ巴になるのか、は分かりませんが、同投票で1位になった候補者が保守派からの支持を完全に固めることは間違いありません。CPACではルビオ氏かクルーズ氏が最多得票を確保するのではないかと予想されるため、正式な保守派の代表はどちらなのか、ということが決まることになり、勝者に予備選挙全体の形勢が大きく傾くことが予想されます。

一方、トランプ氏については保守派運動員による足腰が他両氏と比べて弱いため、CPACでの模擬投票の勝利に関しては不透明な状況です。そのため、トランプ氏としては「CPAC前のスーパーチューズデーで他候補に圧倒的な差をつける」ことが予備選挙勝利に向けて必須であると言えるでしょう。




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yuyawatase at 12:48│Comments(0)米国政治 

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