2017年03月17日

トランプ「不完全な」予算教書が示唆すること

無題

3月16日予算教書(骨格)から分かるホワイトハウスと議会の確執

トランプ大統領が3月16日に発表した予算教書(骨格)は、国務省や環境保護局などの予算を削って、その分を防衛費の増額に充てるというものであり、内容の是非はともかくトランプ政権が明言してきた内容が反映されただけのものであり、それほど驚くべき内容ではありません。

予算を削られる分野に関連している人々からは様々な批判が寄せられると思いますが、それは予算削減の折に見られるお約束の批判であるので重要な情報として相手にする必要も特にありません。

一部のバラマキ的なプロジェクト停止が上院・下院の選挙に影響を与える可能性はあるものの、大半の分野が民主党議員の利権分野であることから肉を切らせて骨を断つ内容とも言えます。

ただし、本予算教書は全く不完全なものであり、現在の段階でこれ以上の議論を行っても仕方がありません。そして、その不完全さがトランプ政権の今後の道筋の困難さを表すものとなっています。

春先まで減税案と財政赤字の見通しの公表は先送りに
 
トランプ大統領が提示する予算で最も焦点になるポイントは、国境税調整を含めた減税改革、の内容となります。しかし、その中心となる減税案の公表が先送りとなったことで、今後の展望が見えにくい状況となっています。

これはトランプ政権と連邦議会の間で税制改革の合意がほとんど得られていないことを意味しています。米国大統領は予算教書で自らの見解を述べることしかできず、実際の予算策定・承認の全ては連邦議会で行われます。

そのため、トランプ大統領は事前にある程度連邦議会側とネゴシエーションして税制改革案を提示するわけですが、現段階まで減税案を示すことができていないことは、肝心の議会対策が不調であることを示唆しています。

トランプ政権の苦しい議会運営、トランプを支持する勢力の実数は25~30%程度か

共和党が上下両院過半数を占めているため、トランプ政権の議会運営が楽になったとみなす向きもありますが、それは現実の政局構造を踏まえていない論説だと思います。

トランプ政権に対して連邦議会の共和党内の約半数を占める保守派が支持、残りの半数の主流派は是々非々というスタンスです。これは選挙戦の軋轢を反映した結果として生まれた構図であり、トランプ政権側が掌握している連邦議会の共和党保守派に属する勢力は全体の25~30%程度でしかありません。

特に連邦上院では100議席中60議席以上を獲得しなくてはフィリバスター(議事妨害)によって予算決議は妨害されるために大幅な妥協が強いられます。また、予算決議に付帯させることが可能な財政調整措置に減税の規模・内容を技術的に委任することもできますが、その方法を採用しても技術的に過半数の賛成が必要となります。

トランプは予算教書(骨格)に先立つ一般教書演説で議会に協力を求めましたが、それは上記のような苦しい議会運営の状況が表れたものでした。

連邦下院の保守派が推進する国境税調整の行方、上院との落としどころを巡る争いは続く

元々共和党下院のポール・ライアン議長とケビン・ブレイディ歳入委員長は国境税調整を含めた大幅な法人税などの減税案を推進しています。連邦下院は共和党の議席の絶対数が上院よりも多く、共和党保守派が推進する税制改革案を推し進めやすい構造があるからです。

しかし、上院は共和党・民主党の議席数が拮抗しているとともに、共和党議員でありながら実際の投票行動が民主党と変わらない「名ばかり共和党員」、マケインなどのトランプと大統領選の過程で深刻な亀裂を抱えた有力議員、国境税調整に反対するウォルマートが地元にある州選出議員などがおり、下院の税制改革案がそのまま通る状況ではありません。

したがって、トランプ政権としては、減税規模や減税内容について上下両院議員との間である程度の合意の目途をつけてから春先に予算教書の本格版を提示する形を取ったのでしょうが、実際にどの程度合意できるかということは不透明感が漂っています。

筆者の見立てでは大統領の予算教書(本格版)と下院が国境税調整入りの減税案を推進し、上院が減税規模の縮小と一部の財源を国境税調整以外のものに切り替える修正を行うのではないかと想定しています。(もちろん、全てが崩壊して減税案自体がほぼ骨抜きになる可能性もゼロではありません。)

トランプ政権の減税改革は世界経済、日本企業に与えるインパクトも非常に強烈なものであり、今後もその展開から目を離すことはできません。

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本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。 

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yuyawatase at 15:21│Comments(0)米国政治 | 小さな政府

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