2017年03月04日
トランプの大統領令・覚書「行政国家の解体」という本質
トランプの大統領令の大半は「政府(≒ホワイトハウス)が権限を手放すため」のもの
トランプ大統領が就任以来発してきた大統領令・大統領覚書、多くの有識者とされる人々がトランプ大統領の精力的な仕事ぶりを独裁と揶揄してきました。しかし、それはこれらの大統領令・大統領覚書の内容を見ていないことを同時に意味しています。
トランプ大統領が命令した大統領令・大統領覚書の大半は、連邦政府が所管している規制権限を手放すことを求めることか、法の厳格な運用を求めるものでしかありません。つまり、政府の権限を小さくして人々の行動の自由を拡げるものであり、または議会に与えられた権限を実直に実行するというものです。
したがって、トランプが独裁者であるというのは馬鹿げた妄想でしかなく、同じく大統領令を連発したオバマ大統領が発してきた、連邦政府の権限を強化したり・法の運用を骨抜きにするような大統領令・大統領覚書と比べることは全く意味を成しません。
1月20日就任式から2月末までに発されたトランプの大統領令・大統領覚書
トランプ大統領が発令した大統領令・大統領覚のうち、
規制緩和、政府関与の縮小、許認可スピードアップを求めるものは、
・医療保険制度改革法の廃止に向けた大統領令(オバマケアの廃止・置き換え)
・国内製造業に関する規制負担の許可制の合理化及び削減に関する大統領覚書
・規制改革に関する大統領令(1つ新たな規制を作る度に2つ規制を廃止する)
・連邦金融システムを規制するための基本原則に関する大統領令(金融規制の緩和)
・連邦金融システムを規制するための基本原則に関する大統領令(金融規制の緩和)
・受託者責任ルールに関する大統領覚書(退職口座に関する投資アドバイスへの規制適用を止める)
・連邦政府機関に規制改革タスクフォース(作業部会)を新設する大統領令
・連邦政府機関に規制改革タスクフォース(作業部会)を新設する大統領令
・連邦政府機関に規制改革タスクフォース(作業部会)を新設する大統領令
・米国の水に関す再評価による法の支配、連邦制、経済成長を回復させる大統領令
・雇用凍結に関する大統領覚書(コスト増につながる新規職員採用停止)
・キーストンXLパイプラインの建設に関する大統領覚書(連邦政府の不許可の見直し)
などです。政府の社会に対する干渉を廃止してビジネスの自由度を増やす改革ばかりであり、これらが粛々と実行されていくとホワイトハウスをはじめとした政府機関の権力は大いに縮小していくことでしょう。
そして、法の厳格な運用を求める大統領令・大統領覚書は、
などです。治安維持、国境管理の厳格化などが求められています。極めて当たり前の内容であり、むしろ現在まで十分な対応が取られてこなかったことに驚きを禁じ得ません。
そして、そのほかには、国防系の対応としてISISなどのテロリスト対策として
などが行われています。これらはテロの脅威に対する公約を遂行するためのものであり、今後更に具体化が進んでいくものと思います。(話題になった入国禁止の大統領令は司法省法律顧問は形式上合法としたものの、立法趣旨論で高裁まで違憲とされたに過ぎません)
いわゆる保護主義的な政策は全体の一部であり、海外との貿易・投資は二国間協定に切り替える(特にTPP三か国のGDPの大半を占める日米)ことから、それほど問題があるものとは思えません。
TPP交渉と合意からの離脱に関する大統領覚書
最後に触れておきたい大統領令は、
です。
前者は日本でいうところの天下りによる腐敗防止(政府機関に奉職していた人の退任後のロビーイングの禁止など)をまとめたものです。このような行為は米国でも腐敗の温床とみなされていますが、トランプ政権は大胆にメスを入れる指令を出しました。日本で天下り云々で騒いだりしている人がトランプ大統領がやろうとしていることをろくに見もせず否定していることはナンセンスでしょう。
また、トランプは黒人からの一定の支持があるとともに、歴代大統領と同じように黒人が多い大学への補助金に関する大統領令に賛成しています。メディアが垂れ流す人種差別的なイメージも実態は異なっていると言えるでしょう。
トランプが推進している政策の本質は「行政国家の解体」である
・キーストンXLパイプラインの建設に関する大統領覚書(連邦政府の不許可の見直し)
・ダコタ・アクセス・パイプラインの建設に関する大統領覚書(連邦政府の不許可の見直し)
・メキシコシティー・ポリシーの復活に関する大統領覚書(中絶を支援する国際組織への補助金停止)
・高い優先順位のインフラ計画に関する環境評価・承認の迅速化についての大統領令などです。政府の社会に対する干渉を廃止してビジネスの自由度を増やす改革ばかりであり、これらが粛々と実行されていくとホワイトハウスをはじめとした政府機関の権力は大いに縮小していくことでしょう。
そして、法の厳格な運用を求める大統領令・大統領覚書は、
・米国内の治安強化に関する大統領令
・国境警備及び移民執行改善に関する大統領令
・犯罪抑止と公共の安全のタスクフォースに関する大統領令
・警察官に対する暴力を防止する大統領令
・国際的な犯罪組織に対する法執行及び国際的取引を防止するための大統領令
などです。治安維持、国境管理の厳格化などが求められています。極めて当たり前の内容であり、むしろ現在まで十分な対応が取られてこなかったことに驚きを禁じ得ません。
そして、そのほかには、国防系の対応としてISISなどのテロリスト対策として
外国人テロリストの流入からの米国の保護に関する大統領令(テロリスト渡航防止法対象7か国からの一時的な入国禁止等)
軍備増強に関する大統領覚書(米軍の即応体制の準備等)
シリアとイラクのISISを打ち負かす作戦立案に関する大統領覚書
国家安全保障会議及び国土安全保障会議の組織に関する大統領覚書
などが行われています。これらはテロの脅威に対する公約を遂行するためのものであり、今後更に具体化が進んでいくものと思います。(話題になった入国禁止の大統領令は司法省法律顧問は形式上合法としたものの、立法趣旨論で高裁まで違憲とされたに過ぎません)
いわゆる保護主義的な政策は全体の一部であり、海外との貿易・投資は二国間協定に切り替える(特にTPP三か国のGDPの大半を占める日米)ことから、それほど問題があるものとは思えません。
TPP交渉と合意からの離脱に関する大統領覚書
米国のパイプラインに関する大統領覚書(パイプライン建設に米国産資材を活用)
最後に触れておきたい大統領令は、
・行政機関の任命者の倫理に関する大統領令
・黒人の多い大学についての大統領令
・黒人の多い大学についての大統領令
です。
前者は日本でいうところの天下りによる腐敗防止(政府機関に奉職していた人の退任後のロビーイングの禁止など)をまとめたものです。このような行為は米国でも腐敗の温床とみなされていますが、トランプ政権は大胆にメスを入れる指令を出しました。日本で天下り云々で騒いだりしている人がトランプ大統領がやろうとしていることをろくに見もせず否定していることはナンセンスでしょう。
また、トランプは黒人からの一定の支持があるとともに、歴代大統領と同じように黒人が多い大学への補助金に関する大統領令に賛成しています。メディアが垂れ流す人種差別的なイメージも実態は異なっていると言えるでしょう。
トランプが推進している政策の本質は「行政国家の解体」である
トランプ大統領が実際に遂行しようとしている行為の大半は、米国内において政府の権限を縮小しようというものです。スティーブ・バノン大統領首席戦略官が保守派の年次総会であるCPACで宣言したように、その狙いは「行政国家の解体」なのです。
トランプ大統領が行っていることは、通常の独裁者であれば自殺行為である、自らの権限を次々と手放す指令を発していることになります。本当に独裁者になりたいのであれば、行政権を次々と強化する大統領令を発して、国民の生活の隅々まで政府による監視の目を張り巡らせれば良いのです。
トランプ大統領をメディアで報道されている受け売りで評価することは間違いであり、その実際の行動を評価することが必要です。
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本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。
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