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2016年01月23日

アイオワ州党員集会直前、共和党・民主党の波乱が現実に?

Donald_Trump_by_Gage_Skidmore

トランプ氏の初戦勝利、爆走継続がいよいよリアルな段階に・・・

2月1日のアイオワ州の党員集会直前の米国大統領予備選挙の風景が面白いことになってきました。筆者は昨年から一貫してトランプ氏が強いことを確信しておりましたが、他の日本の米国有識者の皆さんは「予想が全て外れて」西日本の大雪以上に心胆寒からしめているものと思います。

現在、全米世論調査、アイオワ州・ニューハンプシャー州の世論調査でもトランプ氏が頭一つ抜けた状況であり、このままの数字で推移していくとトランプ氏への共和党指名はリアリティーはかなり高いと言えるでしょう。

最近では、2008年選挙で副大統領候補者を務めたサラ・ペイリン女史のエンドースメントなど、保守派の中からもトランプ氏を明確に支持する人物も現れ始めています。まさに「山が動きつつある」状況です。

<過去記事>
米国大統領選挙、トランプVSサンダースの究極バトルがあり得る?(1月12日)

むしろ、2位の「テッド・クルーズ氏が残りすぎたこと」が反トランプ陣営の最大誤算

筆者の見立てでは、トランプ氏の爆走状態は「テッド・クルーズ氏」が2位の位置で残り続けたことが原因であると推測しています。

米国共和党の大統領予備選挙では、主流派(エスタブリッシュメント)と保守派(草の根団体)との伝統的な対立構造があります。

保守派の候補者が大衆からの支持を集め、主流派を推すメディアが保守派の候補者を叩くという構造が予備選挙で毎回のように発生してきています。その結果として保守派の候補者は、候補者の顔を取り換えながら支持率のアップダウンを繰り返すことが通例となっています。

今回の予備選挙での保守派候補者の典型的な事例は黒人候補の「ベン・カーソン氏」であり、支持率トップを一時的に記録しながらも、カーソン氏の自伝の中の虚偽記載の疑いなどがメディアで報じられたことでトップ争いから脱落することになりました。

その後、保守派の支持はベン・カーソン氏からテッド・クルーズ氏に流れることになりました。

そのため、通常のケースであれば、テッド・クルーズ氏がメディア・バッシングにさらされて失速し、マルコ・ルビオ氏などに主流派・保守派の支持が集約されることが予測されるところでした。

しかし、今回はトランプ氏の存在によって主流派の計算が狂った状況になっています。つまり、メディアのバッシングがテッド・クルーズ氏ではなくドナルド・トランプ氏に集中することになり、メディアがテッド・クルーズ氏の支持率を下げるキャンペーンを打つ余裕がなくなってしまったのです。

その結果として、主流派は支持率が高い保守派のテッド・クルーズ氏をエスタブリッシュメントとして再定義することを迫られたようです。メディアで彼のハーバード卒の経歴や奥さんがGSマネージャーであることなどが取り上げられて、保守派の主張を持つインテリ・エリートとしてのイメージを植えつける印象操作が行われてきた形跡が見え隠れします。

しかし、それらの行為は支持率3位の本命マルコ・ルビオ氏を主流派・保守派を最終的な落としどころとして一本化しようとしていた従来までの流れに反するものでした。むしろ、結果として非トランプの有権者の支持をマルコ・ルビオ氏やブッシュ氏などに分散する構図となり、現在のトランプ氏の独走状態を許す結果となっています。

通例では下降するはずだったテッド・クルーズ氏の支持が高い状態で留まっていることが反トランプ陣営にとっては大きな誤算であったと言えるでしょう。

日本の米国大統領選挙に関する報道は「エスタブリッシュメントの意向」で動く

日本国内ではトランプ氏を嘲笑するような予備選挙の解説記事が溢れていますが、とても真摯に大統領選挙の様子を解説したものになっているとは思えません。

「トランプ来るかも?」というような筆者のような言説を垂れ流していると、政治業界では「この子は頭悪いのね」という雰囲気が流れます。そのため、内心トランプ来るかもと思っていても、多くの有識者の皆さんはトランプ氏についてバイアスがかかった論評しか発表できません。見栄って怖いですね。

私が米国大統領選挙に関心がある日本の人々にお勧めしたいことは、日本人の解説記事は全部無視して、

RealClearPolitics

という米国大統領選挙の世論調査データが集まったサイトを参照することです。大統領選挙に関する無意味な分析記事よりも世論調査のページを見たほうがよほど米国のリアルな現状を知ることができます。

選挙は数字と構図が全てであり、今のところドナルド・トランプ氏は極めて不利な状況から巧みな手法で首位を勝ち取っているということが言えます。大富豪であるにも関わらず、現状まで自己資金をほぼ投入せずに寄付だけで選挙戦を行っている点だけでも驚きを禁じえません。

ただし、トランプ氏もまだまだ安泰とは言えず、クリントン女史も厳しい戦いに

上記のように、筆者はトランプ氏の選挙戦略(メディア対応とポジショニング)について高く評価していますが、それでもトランプ氏が完全に優勢であるとは言い切れません。それは現状において非トランプの支持率の合計がトランプ氏の支持率を上回っているからです。

そのため、今後の各候補者の撤退時のM&Aの結果によっては、トランプ氏の支持率が非トランプ候補者によって追い抜かれる可能性も十分に残されています。企業買収を得意としてきたトランプ氏の真価が問われるのはここからであり、トランプ氏にとっては真に厳しい正念場が訪れることになります。

クリントン女史もサンダース氏の激しい追い上げを食らっており、予備選挙の状況が盤石な状況とは言えない雰囲気が出てきております。まさに、選挙は最後の結果が出る瞬間まで分からない、ということですね。

今後もますます目が離せない怒涛の展開が待ち受けている気がしてなりません。





 
敗者復活
ドナルド・J. トランプ
日経BP社
1999-04-16


困難な選択(上)
ヒラリー・ロダム・クリントン
日本経済新聞出版社
2015-05-01

 

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yuyawatase at 11:56│Comments(0)米国政治 

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