2017年01月10日

意外と現実的なトランプのメキシコ国境の壁

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トランプが主張する「メキシコ国境の壁」について知られていないこと

トランプ氏が主張するメキシコ国境の壁はリベラルに偏向するメディアの情報を摂取しているだけでは荒唐無稽な主張のように感じるのも無理はありません。メディアはトランプ氏が実現不可能な馬鹿なことを述べているように演出していますが、実際は果たしてそうでしょうか。

従来までのセオリー通りで行くと、トランプ氏に対するレッテル貼りは極めて悪質なものが多く、物事は複数の角度から分析を加えることで初めて本質的なものが見えてくると思います。

そこで、今回は壁の建設を肯定する側からの見解を紹介することを通じ、メキシコ国境との壁に関する基本的な知識について、私たちが知っておいても損はないことをまとめていきたいと思います。

オバマもヒラリーも賛成していた「メキシコ国境の壁を建設する」法案

トランプ氏は万里の長城を作る荒唐無稽な妄想に取りつかれているのでしょうか。彼の発言には法的根拠は何もないのでしょうか。これらの思い込みは明確に間違っています。

メキシコ国境に壁(フェンス)を建設する法案については、ジョージ・W・ブッシュ政権時代の2006年にSecure Fence Act of 2006が連邦上院・下院で承認されたことで法的な根拠を持っています。

この法案の趣旨は国境管理と移民システム改革を改善する努力に関して重要なステップとなり、物理的な障壁と21世紀の技術を展開することで、国境管理員の活動を支援して国境をより安全なものとすることでした。

そして、同法案は連邦上院・下院で上院80対19、下院283対138の圧倒的な多数に支持されました。このとき、当時上院議員であったバラク・オバマもヒラリー・クリントンも同法案に賛成票を投じたことは知られていません。

この際、同法案の推進者であった下院の国土安全保障委員会のピーター・キング委員長が議場で同法案は700マイル以上の二重のフェンスを設置することを目的としていることを説明しています。

全ての国境に二重の壁を作るための予算が全て承認されたわけではありませんが、共和党・民主党の両党の議員が「壁」の建設に賛同したことは事実として残っています。

つまり、トランプ氏とオバマ・ヒラリーの両者の違いはどこまで壁を作るのか、という点に過ぎません。

したがって、トランプ氏はゼロから法案を提出するのではなく、同法案の追加提案として予算を確保していくことによって壁の建設を粛々と進めていくことになります。

実際に壁を建設するために必要な費用はおおよそ幾らなのか

現在までに壁(フェンス)の建設に使用された予算は、1ドル100円換算で約2300億円程度です。これは現状までに建設された約650マイルの一重目の壁と約50マイルの二重目の壁の費用です。

ヘリテージ財団のDailySignalによると、国境管理を強化することを目的としたシンクタンクであるthe Center for Immigration Studiesの Jessica Vaughanの試算では、追加的な建設費用の最も野心的な見積りでは約1.1兆円程度になるとのことです。

ただし、上記のJessica女史のコメントとして、不法移民の犯罪や福祉に関するコストは、米国の納税者に少なく見積もっても毎年・約5兆円以上かかっていることも指摘されています。仮に壁を建設していくことで同コストを抑えることに繋がるのであれば一定の経済的な正当性もあるということになります。

なお、共和党は新予算案の承認期限である4月末までに予算を作成・承認する予定です。今回の予算で承認される予算規模はまだ発表されていませんが、何らかの形で予算付けがされることはほぼ確実と言えそうです。

メキシコ政府に費用負担させるために考えられる方法とは何か

トランプ氏は同壁の建設費用をメキシコ政府に負担させる旨を明言していますが、こちらについての実現性はどの程度あるのでしょうか。国家間の面子の張り合いという文脈では実現へのハードルはかなり高そうですが、経済的な交渉事としては成立する可能性も十分にあります。

2015年のメキシコへの直接投資額・約3兆円の半数は米国からであり、大手企業の一社当たりの投資額は数百億円規模のケースとなっています。

これらがトランプ氏が行っているTwitterによるメキシコに工場立地を予定している企業への介入によって撤回されていくことは、メキシコ政府にはボディーブローとして確実に効いてくるはずです。

また、数兆円規模とされるメキシコへの犯罪性資金の送金に関する管理を厳格化することにより、メキシコ政府はジワジワと首を締め上げられる状況となるものと思います。

公式的な圧力としては、米国からメキシコへの政府援助額の減額を示唆する事もあり得ます。

トランプ政権は、これらの厳しい措置を実施しつつ、メキシコ政府に同時にアメを配ることも考えられます。メキシコ政府のうち歳入・石油関連収入は約20%を占めており、この点についてメキシコ政府とエネルギー開発を進めるトランプ政権との利害は一致している状況です。

したがって、トランプ氏は非石油関連収入を得る機会を口先介入で制限しつつ、メキシコ政府と適当なところでエネルギー分野で握ることで壁建設のための予算を支出させることも不可能ではないと思います。

トランプ氏と共和党の思惑通りに全てが進むとは限りませんが、トランプ氏の「メキシコ国境の壁」を最初から荒唐無稽と切り捨てることは少なくとも間違っていることは確かです。

分断されるアメリカ
サミュエル ハンチントン
集英社
2004-05


本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。



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yuyawatase at 15:51│Comments(0)米国政治 | 社会問題

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