悪いポピュリズムと良いポピュリズム「保守主義の民衆化」というプロジェクト

2017年01月05日

なぜトランプ当選を外した国際政治学者が今年の予測を行っているのか

a1380_000087

米国大統領選挙は「全世界の国政選挙で最も情報が入手しやすい選挙」

最近、昨年の大統領選挙の予測について、国際政治学者などから「米国大統領選挙の予測を外すことは大したことではない」と述べている開き直りの論稿が出てきています。そして、相変わらずファクトが怪しい愚にもつかないほぼ思い込みに近い国際政治の予想を垂れ流している状況が続ています。

筆者は米国大統領選挙の予測すらまともにできない国際政治学者に他の国の政治動向がまともに説明できるとは思えません。

なぜなら、米国大統領選挙は「全世界の国政選挙で最も情報が入手しやすい選挙」だからです。

米国大統領選挙は英語という日本人でも比較的読みこなしやすい言語で情報収集が可能であり、世論調査に関する生データや政局動向についても逐次情報が更新され続けます。日本に物理的にいたとしても米国人並みの情報を得ることができるため、これほど簡単に結果を予測できる選挙は世界に他にありません。

むしろ、筆者のように世論調査・選挙分析を生業の一つとしてきた人間にとっては、日本のほうが各種情報公開の状況が悪くて正確な予測が難しいと思うぐらいです。(そもそも何時解散総選挙になるかを予測することすら難しい。)

つまり、国際政治、特に民主主義国の政治動向の予測という意味では、米国大統領選挙はビギナー中のビギナーが扱うべき題材と言えます。

今年予定されている欧州の選挙予測は米国大統領選挙よりも困難

今年予定されている欧州の国政選挙の予測は米国大統領選挙よりも困難であることは言うまでもありません。

米国大統領選挙のように世論調査結果が常に大量に提供されるわけでもなく、それらの国々の政治情勢は各国の母国語によって詳細に解説されることになります。これらの選挙を日本人がしっかりと予測することは難しく、多くの国際政治学者の皆さんも英字化されたメディアからの情報に頼ることになるのではないでしょうか。

米国大統領選挙では英字メディア(つまり、エスタブリッシュメント側)の情報に頼り切ったため、藤原帰一氏のような国際政治学者がヒラリー大勝利を予言して赤っ恥をかいたわけです。しかし、今年の欧州の選挙はデータに基づく分析がほとんどの日本では行われないでしょうから、彼らが思い込みに近い予想を再び外しても恥の上塗りをしなくても済むことができるかもしれません。

筆者はトランプ当選すら外した人々がなお今年の国際政治の情勢を予測をメディア上で語り続けることに言論界の貧困を感じざるを得ません。欧州政治の話をするなら、せめて欧州の選挙情勢を専門にしている有識者にメディアは活躍の場を与えるべきでしょう。(それだと商業的に雑誌が売れないのかもしれませんが・・・)

今後は専門性の高い地域研究者が報われる環境になることに期待したい

今後は、国立大学などは、少なくとも選挙なら選挙、政局なら政局、各国情勢の専門家をしっかり育成することが望ましいと思います。従来までのように、〇〇国、〇〇地域の専門家、というだけで、専門の畑が全く異なる地域の選挙や政局まで語らせることは無理があるでしょう。まして、全く違う国・地域の専門家に専門ですらない分野を語らせることはいい加減にしてほしいです。

日本にも米国の選挙情勢などについて詳細かつ冷静に研究されている方々もおり、そのような方々に発言の機会がしっかりと用意されていれば、日本国内における今回の大統領選挙予測のようなおかしな結果にはならなかったはずです。今年の欧州の選挙では、昨年の反省を生かして付加価値が高い分析ができる人々が出てくることを望みます。

日本の言論界の悪弊であるリベラルな学者なら専門以外の何を語らせても「それっぽくしゃべることが許される」ことにはそろそろ見直されていくべきではないでしょうか。日本や世界を取り巻く国際政治が難局を迎える中で、高度で専門的な言論の必要性が認識されていくことが重要です。

当確師
真山 仁
中央公論新社
2015-12-18






本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。




スポンサードリンク
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
yuyawatase at 12:49│Comments(0)米国政治 | 社会問題

コメントする

このブログにコメントするにはログインが必要です。

悪いポピュリズムと良いポピュリズム「保守主義の民衆化」というプロジェクト