2017年04月02日

トランプの対中国政策(1)「揺さぶり」と「妥協」

AP
(AP)

トランプ政権の対中国政策は「揺さぶり」と「妥協」 

トランプ政権の東アジア政策、特に中国に対する政策について憶測が飛び交っています。そして、日本の有識者からはトランプ政権は対中強硬派であるとする見解も散見されます。

しかし、これらについては部分的には当たっているものの、トランプ政権の人事や行動を冷静に分析する限りは同政権を中国強硬派と断定するのは早計です。

トランプ政権は中国というプレーヤーに対して「揺さぶり」と「妥協」という交渉を行っています。

「揺さぶり」とは中国の国益に反する言動、そして「妥協」とは「揺さぶり」を引っ込めることへの対価を得ることを指します。

ただし、この「揺さぶり」は、中国からの譲歩、または日本・韓国・台湾などの米国の対中政策の変数として扱われる国々からの協力を引き出すための道具に過ぎません。実際には、「揺さぶり」は米中間での妥協、東アジア諸国からの協力、を引き出した後には一定の「妥協」による手打ちが行われてきています。

そして、この「揺さぶり」は共和党保守派の意向、「妥協」は共和党主流派の意向、という対応関係が存在しており、トランプ政権の対中政策は両派の国内政局の綱引きからの影響を受けることにもなります。したがって、トランプ政権の対中国政策を理解するためには、米国の国内政治情勢、その力関係を踏まえなくては片手落ちの状態となります。

日本人識者らは表面的な「揺さぶり」だけに注目し、徒にトランプ政権の対中政策を日本国民にミスリードしている人が多数存在しています。しかし、これらは米中関係・米国国内関係に関して理解できていない人々であり、基本的に話を真面目に聞くだけ野暮です。

そこで、本ブログでは、上記の観点を踏まえながら今後複数回に渡ってトランプ政権の対中国政策を分析し、その見通しについて予測を行っていきます。

トランプ政権の対中国政策に関する現実的な視座を持つべき

本分析はトランプ政権の対中国政策を、人事、行動、環境、の3点から解説していきます。具体論に入っていく前に、トランプ政権の対中国政策の基本的な理解について概要を整理しておきたいと思います。

筆者は米中戦争のような非現実な仮定を喧伝し、書籍の売上部数を稼ごうとする輩には嫌悪感を持っています。また、トランプ政権が無能であるという非現実な仮定についても賛同しません。

トランプ政権は「主に通商問題で有利な立場を構築するためにイデオロギーや安全保障を絡めた交渉事を行う」可能性が高い、という分析が筆者の結論です。

これは実際に配置されているトランプ政権の人事、大統領選挙から現在までの行動、そして中間選挙を見据えた米国国内の政局状況などを踏まえれば妥当なものだと思います。トランプ政権の対中国政策派国内政局の影響を受けるため、若干のブレはありますが概ね間違いないものと思います。

米国の保守派はイデオロギー的な自由主義の拡張を望んでおり、トランプ政権における外交政策においても一定のパワーを有しています。トランプは共和党内のこれらの支持基盤に配慮する必要があります。また、中国の拡張主義に対して安全保障上の懸念を示すことも必要であり、マティスをはじめとした同盟国との関係を重視する職業軍人らからの支持を得ることも重要です。

さらに、選挙の観点に立つのであれば、中国に強い態度を示すことで国内の選挙面での得点を稼ぐことを目指すことになります。こちらはナヴァロやロス、そしてバノンが志向している方向性になりますが、これは2018年の中間選挙での勝利を手にするためのデモンストレーションに過ぎないと思われます。その上で、輸出補助金問題などで中国側からの一定の譲歩を引き出すことができれば大きなポイント獲得となります。

しかし、現実には米中関係は経済面・金融面で非常に深い関係となっており、相互依存は切っても切れない状況となっています。また、中東方面などの地球上の別地域での安全保障上の課題を抱える米国は東アジアに新たな戦略正面を抱えることは困難であり、北朝鮮問題について中国の積極的な役割を求めています。これらの事象は共和党内での主流派からのトランプ政権へのプレッシャーとして働くことでしょう。

したがって、トランプ政権は中国に対して、イデオロギー・安保面での「揺さぶり」をかけることで保守派・同盟国を満足させるとともに、通商問題での強硬姿勢を示すことで選挙上の成果を上げた上で、更に中国から一定の譲歩を得ることで同国との妥協を模索する主流派を納得させる、という高度な外交戦略を実践に移すことになるでしょう。(それが成功するか否かは不透明だと言えます。)

明日以降、具体的なファクトベースでトランプ政権の対中国政権の方向性を検証していきます。

トランプの対中国政策(2)対中政策人事の二面性 に続く。




本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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2017年03月30日

著作『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)のご紹介

無題
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著作『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)を発刊します

ブログ読者の皆様のおかげで『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)を2017年4月1日に出版する運びとなりました。深く感謝いたします。(一部都心の本屋さんでは既に陳列が始まっているようです。)

読者の皆様のおかげで現在Amazonのカテゴリー「アメリカ」で1位~2位で推移しています。

本作を執筆するきっかけとなりましたのは、まさに本ブログの更新及びアゴラへの転載を祥伝社の編集の方に注目して頂いたことです。

日本国内ではヒラリー勝利が喧伝していたいい加減な言論が蔓延する中、データと事実を用いてトランプ当選の可能性を予測した圧倒的な少数派として、日本人に正しい情報を伝える取り組みを続けてきたことを認めて頂いたことを嬉しく感じております。

本作の読みどころ「日本人と180度真逆の発想を持った共和党保守派を知ること」

本作で取り上げた大統領選挙やトランプ政権の解説について是非多くの皆様にご一読いただければと思います。その上で、筆者が読者の皆様に強調したいことは「共和党保守派」という大半の日本人とは180度真逆の発想を持った人たちについて理解を深めてほしいということです。

多くの日本の有識者は共和党保守派について良く知らないまま、彼らについて偏見に基づく解説を行っています。米国政治に関する研究は共和党保守派を蔑視する学者らによって行われてきており、無自覚なのか意図的なのか分かりませんが、日本人に対して正しい情報が伝わりにくい環境があります。

本書は筆者が2009年当時から付き合ってきた保守派の人々の政治的な思考・行動を大統領選挙及び組閣に絡めてまとめたものであり、政権与党である米国の共和党の中で影響力を強める保守派の考え方を知るための一助となるものと思います。

なぜ共和党保守派は「小さな政府」を求めているのか、そして大統領選挙にどのように関わってきており、トランプ政権の中で自らのポジションをどのように位置付けているのか、リベラルな関係者によって寡占されている一面的な報道などでは伝わらない米国の今を理解できるものと思います。

次回作があれば、今度は「共和党保守派の政治システム」について書かせてほしい

万が一、本作が人々に受け入れて貰えて一定数以上販売実績が出た場合、将来的には「共和党保守派の政治システム」について解説する本を出したいと思います。

共和党保守派が有する、①統合機能(年次総会)、②司令塔機能(毎週実施される作戦会議)、③運動支援機能、④訓練機能(選挙学校)⑤政策立案(シンクタンク)、⑥資金源(財団)、⑦メディア及びメディア監視機能、➇歴史教育、などがどのように有機的に結びついて機能しているのかという分析をまとめたものを想定しています。日本の政治では見たことがない近代的なシステムが存在しており、筆者は非常に驚かされた経験を持っております。

2年前に我が大学に上記のシステムを調査する研究計画を提出したときに、このイデオロギー的に偏った企画は君の趣味だよね、という感じで却下された研究企画なのですが、米国政治やトランプ政権を理解するためだけでなく、日本の政治改革にとっても重要な示唆が含まれたものだと確信しています。(むしろ、本件について一緒に研究して頂ける大学研究室などがあれば同時に募集しています。)

上記の内容を出版という形でまとめることができれば、単なる研究というだけではなく多くの日本の方に知って頂く機会にもなるため、非常に有意義なものになるのではないかと夢想しております。

とはいうものの、まずは本作が売れてくることを願っております。読者の皆様にもご協力を賜れれば幸いです。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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yuyawatase at 17:00|PermalinkComments(0)米国政治 | 社会問題
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2017年03月26日

森友問題で安倍首相が辞任するべき唯一の理由

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籠池問題の本質は「反社会的組織の疑いがある」組織の名誉職に首相夫人が就いていたこと

籠池問題の本質は「自民党の国会議員が法人の代表者が銭を持ってきた」と主張している法人の名誉校長を務めていたということです。

メディアでは「国有地の払い下げに対して便宜を図ったかどうか」という点ばかりが強調されていますが、役所側が資料を破棄したと主張している以上、どちらにせよ事実関係を推論することしかできず、与党も野党もどうでも良い罵り合いを継続するだけのことです。まして、首相が籠池氏に100万円寄付したかどうかという真実でもどうでも良いことが議論されていることに辟易します。

本件で唯一明確になっていることは、

〇安倍昭恵・首相夫人が瑞穂の國記念小學院の名誉校長に就任していたということ
〇鴻池参議院議員が記者会見やメディア取材で籠池氏が金銭(らしきもの)を包んできたので突き返したと主張していること

です。賄賂の申し込みは相手が受領しなくても賄賂申込罪が成立するため、鴻池議員の発言は非常に重いものであり、国会議員に賄賂を申し込もうとした疑いがある法人の名誉校長に首相夫人がなっていたこと自体が問題なのです。

実際に便宜が図られたかどうかなど、鴻池議員の発言を前提とするならもはや問題ではありません。首相夫人が名誉校長の職を軽率に引き受けたことにより、安倍政権のガバナンス及びコンプライアンス、更に言うなら安全保障上の基本的な管理すらできていないことが明らかになりました。

上場企業の役員でも利益相反の恐れがある法人の役職者に親族がなることは望ましくない

上場企業及びグループ会社の役員に就任する際、通常の手続きとして、近親者が取引先、利益相反の恐れがある法人の役職者にいるかどうかをチェックすることは当然のことです。それらの親族がいる場合には利益相反行為を行わないことを誓約することになります。

本件については首相夫人という身分にある人物が「その場のノリ」で名誉校長という役職に就任するという信じがたい行動を行ったことが問題なのです。鴻池議員が告発したような行為を自党の所属議員に行っているような人物について相手の素性をまともに確認することもなく、首相夫人が名義貸しを行ったという危機意識の無さこそが信じられません。

また、首相夫人付きの公務員はその現場を目撃していたとしたら当然制止するべきでしょう。何のためにお付きの人がいるのか、を全く理解していない税金の無駄です。それらの公務員は首相夫人の日々の世話をすることだけが仕事ではなく、このような輩による夫人への篭絡行為を防止するために、国民は血税を払ってそれらの職員を配置しているのです。このような行為を黙殺した上に、ましてその相手の要望に応じて役所に問い合わせた結果を報告する間抜けぶりは常軌を逸しています。忖度云々のレベルではありません。

学校法人という許認可・補助金に関係がある法人の名誉職に、首相夫人という身分にあるものが「自らの一存」で民間の法人の名誉職に就任できる、そしてそれを知りながら黙認してきたことは、ガバナンス、コンプライアンス、安全保障の観点から論外です。

「首相夫人」を「公人」として位置づけ直し、非常識な行動を謝罪・反省することが必要

安倍首相は本件について国有地の払い下げについて強気の発言を行っています。

しかし、安倍首相が国民の代表である国会議員に対して最初に行うべきことは「逆切れ」ではなく、首相夫人の行動をコントロールできていなかった自らの不徳によって国会を空転させていることへの謝罪です。そして、自らの所属政党の国会議員が同法人の反社会性について告発している現状に鑑み、早急に調査をした上で報告すべきでしょう。

安倍首相はこの問題が単なる行儀が悪い学校法人ではなく、北朝鮮などの敵性国家の息がかかった組織だったらどうするつもりだったのでしょうか。昭恵夫人は過去に大麻使用容疑で逮捕された高樹沙耶氏と親交があり大麻解禁論者になっていましたが、それらの問題発覚後も夫人の行動を何ら改善しなかった危機管理能力の不足・無反省ぶりは深刻です。

首相夫人の扱いは安全保障上の重要事項であり、予算委員会で議論することは当たり前です。北朝鮮の恣意行動などへの対処と同様に早期の改善を行うことが必要です。

昭恵夫人がFBで私人として自らの意見表明を出したことには呆れ果てました。いまだ問題の本質が分かっていない証拠です。今すぐ首相夫人を「公人」として位置づけ直して管理すべきです。

仮に安倍首相が昭恵夫人の行動を改善する気がないなら即刻首相を辞任して頂きたいと思います。自民党には他にも優秀な議員が多数存在しており、常識を持った行動ができる夫人を持った方がおります。たった一人の人間を説得するだけで可能な安全保障上の深刻な問題すら改善できない首相は日本に必要ありません。






本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。



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yuyawatase at 21:06|PermalinkComments(0)国内政治 | 社会問題
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