2017年06月18日

2017年東京都議会議員選挙を10倍楽しむ超入門

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<毎日新聞から引用>


2017年・東京都議会議員選挙を考える上で知っておくべきこと

2017年東京都議会議員選挙は近年稀に見る複雑な政局が入り乱れており、その正しい見方を知っておかねば有権者やギャラリーとして十分に堪能することができません。

たとえば、小池氏は「なぜ豊洲移転をギリギリまで決断できなかったのか」、「なぜ都民ファーストは公明・元民進・生活ネに推薦を出すのか」、「なぜ都民ファーストは大阪維新のような保守ではなくリベラルな傾向があるのか」などについて正しい認識を持つことが重要です。

東京都議会を取り巻く政局構図を理解することで、有権者として構図を理解した上での投票を行うことが可能となり、ギャラリーとしては都議選後の政局予測を楽しむことが出来ます。

なぜ小池百合子は豊洲移転をギリギリまで決断しなかったのか

先日、小池百合子知事は市場移転問題プロジェクトチームの結論を待ってから「豊洲移転」を決断したわけですが、これはあくまでも形式上の話に過ぎません。小池知事の腹は最初から豊洲移転であったことは間違いなく、いつどのタイミングでそれを表明するのか、という問題に過ぎなかったものと思います。

それでは、なぜ小池知事は「決められない」という批判を受けながら、豊洲移転の表明をここまで先延ばしにしてきたのでしょうか。今まで識者らによって豊洲移転、築地再整備、様々な意見が開陳されてきました。しかし、この問題は市場整備の合理性ではなく完全に単なる政局であるため、それらの政策的な説明は的外れなものだと思います。

小池知事が豊洲移転を先送りしてきた理由は「都議会を正常に運営する」ため

小池知事が豊洲移転を先送りしてきた理由は、「政策的なものではなく都議会を正常に運営するためであった、」と考えるべきでしょう。

小池系の都議会議員は、都知事選当初はかがやけTokyoの3名のみであり、現在においても都民ファーストの都議は合計で5名しか存在していません。つまり、都議会を正常に運営するための過半数には遠く及ばず、都議会自民党と対決姿勢を強めた都知事選後に小池都政は早晩行き詰まることが明らかでした。

都議会で過半数を構成するためには、自民党を分裂させるか、公明党を含む他政党の全てを取り込むか、という二択しか存在せず、自民党からの引き抜きは僅か2名しかできなかったことに鑑み、小池知事の選択肢は後者しかなかったものと思われます。そのため、共産党が熱烈に反対する豊洲移転を「ギリギリのタイミングまで遅らせた」というだけのことでしょう。

したがって、小池知事が「決められなかった」理由は都議会与党会派が圧倒的に少数に過ぎないというだけのことだと思われます。仮に小池知事が豊洲移転を早々に決めた場合、それは自民党との中途半端な妥協を意味するとともに、政局運営上はより深刻な問題が生じたものと思われます。

都民ファーストの歪な推薦の乱発状況は都議会での過半数獲得のためのもの

都民ファーストが公明・元民進・ネットなどに推薦を乱発している理由も都議会を運営していくための手段であったとみなすべきでしょう。つまり、自党の推薦を乱発することによって、そのラベルが貼られた議員たちは都議会運営で小池知事に協力するという目印になります。

ただし、普段は都議会に関心が低い東京都の有権者の目から見た場合、都民ファースト公認と無所属or公明orネット・都民ファースト推薦などの良く分からない状況が生まれてしまいました。

一見すると都民ファースト公認&都民ファースト推薦で同一選挙区で複数議席取ることが狙いのように見えますが、これは行きがかり上そうなっただけのことであり、そこそこ強い現職の議員に推薦が出せれば良いという戦術上の判断よりも都議会運営を含めた政局上の判断が優先したと言えるでしょう。

大阪で橋下氏が自公推薦で府知事選挙で勝利したあと、大阪維新が元々自民党の内部会派からスタートし、大阪維新の分裂時に既に一定の候補者数を獲得してきた事情とは大きく異なるものといえます。むしろ、自民党と対決して誕生した小池都政はこれ以外の選択は困難であったと思われます。

東京都議会議員選挙の結果次第で、小池知事は「決められる知事」になる可能性が高い

したがって、東京都議会議員選挙で都民ファーストが躍進し、公明党と連立することで過半数を形成することに成功した場合、小池知事は従来までの妥協的な「決められない」政局運営のスタンスを大きく転換し、十分な指導力を発揮できる体制に移行することになります。

このとき、都議会運営上、共産党に配慮する必要がなくなるため、政策的選択の余地が飛躍的に拡がるものと思います。自民党との間で様々な政策的な交渉が可能となるため、小池知事による自民党からの引き抜きが本格化し、都議会自民党は空中分解していく可能性があります。

逆に、都民ファースト公認・推薦及び公明党で過半数に到達しなかった場合、小池都政は共産党との事実上の連携余地を残す必要があるため、小池知事の支持率は徐々に低下し続けるとともに、都民ファーストの素人議員の不祥事が乱発し、逆に都議会自民党側から都民ファーストの議員が一本釣りで抜かれていくことになるでしょう。

百戦錬磨の自民党の重鎮の当選が確実視される中で、都議会で親小池勢力が過半数を制することが出来るか、は小池都政にとっての生命線となるでしょう。

都議選後、都民ファーストの会の内部の勢力争いも本格化するのではないか

都議選後、もう一つ注目に値する要素は、都民ファーストの会内部の勢力争いです。江戸川区選挙区では、現職の都民ファーストの都議である上田令子氏に宿敵とも言える元民進の女性都議が「推薦ではなく公認」で立候補しています。

これは明らかに当初から小池知事を支持してきた、かがやけTokyoの3名、上田、両角、音喜多の3名を小池知事が排除しようとしているシンボリックな動きと言えるでしょう。

上記のような政局的な流れを受けて同議員らは当初こそは必要であったものの、都民ファーストが大量議席を獲得した際には存在価値が明らかに低下します。まして、自民党からの引き抜きを見据えた場合、非元自民・非元民進系、中途半端に当選回数の多い議員は政局運営上邪魔だと言えるでしょう。

そして、これら3人の選挙区は公明党候補者が存在しているため、公明票獲得という戦術上の融和の余地もなく、民進候補者もいるために連合による支援という靱帯も機能しません。つまり、小池執行部はこの3人の首に鈴をつけることは難しく、早晩同会内での軋轢が表面化していくことになるものと思われます。

都議会といえども議席数は決定的に重要、都議選を10倍楽しむために背景情報を知る必要がある

豊洲問題などについても、メディアは表面的な報道を繰り返しており、都議会議席数の構図にまで踏み込んだ解説がほとんどなされることはありません。したがって、今、何が起きているのか、という基礎的な理解が進むことはありません。

上記の説明の通り、小池知事の行動は都議会での議席数の影響を受けて大きく変わることになるでしょう。筆者は今週のFLASHの取材を受けて、現時点での都議選挙の各選挙区予測を行いましたが、都民ファーストと自民党は過半数ラインを巡って極めて拮抗した戦いをしているものと思っています。予測を楽しんで頂ける方には是非とも同誌を手に取ってみてほしいと思います。

むろん、小池側は現在のまま行くわけもなく、都議選に向けてまだまだ仕掛けを行うものと思います。それらによっても当落の数字はまた前後することになるでしょう。当選と判定させて頂いた方はそのまま頑張ってほしいし、落選とした方も奮起の材料にしてもらえればと思います。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。




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2017年06月10日

なぜ、ホームグロウンテロは起きるのか

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トランプの入国規制に関してテレビで議論になりました

筆者はトランプ政権が実施している入国規制に関しては原則として賛成の立場です。本来は国境も何もない方が良いと思うものの、治安上の現実的な対応としては必要なものだと考えております。

本日出演させて頂きましたテレビ番組で、入国規制はホームグロウンテロ対策に役立たないのではないか、という指摘がありましたが、必ずしもそうとは言えないものと思います。

人間同士が相手に影響力を行使する際に、直接的に顔を合わせてテロに勧誘する行為は他の手法と比べて極めて有効だと思います。したがって、テロリストの可能性がある人物の入国をできるだけ排除することは、ホームグロウンテロを未然に防止することにも役立ちます。

低所得者は社会的不満を抱えているのでテロリストになりやすい、は本当か

筆者は、世間で流通している「低所得者は社会的不満を抱えているのでテロリストになりやすい」は昔の価値観ではないかと思います。下部構造が上部構造に影響を与えるというマルクス史観は一部正しい点はあるものの、テロリストの誕生に関して合理的な説明理由にはならないと思います。

人間の生死をかけた犯罪行為というものは「所得」という下部構造に関係なく、世界構造に対する「認知」の枠組みによるところが大きいものと思います。つまり、高所得者であったとしても低所得者であったとしても、何らかの思想に感染することは有り得ます。

高所得者が常に社会を肯定する理性的な認知を持っており、低所得者は常に社会を否定する狂信的な思想に染まりやすいという認知は、所得差別的な低所得者蔑視ではないかと考えます。そして、オウム真理教の事例でもそうであったように、テロの実行犯は低所得者とは限らないのです。

したがって、テロの原因を所得格差に過度に求めることは、原因と結果の履き違いに至る可能性が高く、現代の「認知操作」に軸を置くテロの「過激化」の前ではほぼ意味をなさないものと思います。テロの懸念は政府による思想の自由への過度の統制を認めない自由社会においては表裏一体のものです。


ホームグロウンテロは防止不可能、不可能な行為を正当化するために自由を制限すべきではない

ホームグロウンテロを防止することは事実上不可能です。なぜなら、テロを促すように人間の認知に影響を与える情報を社会から完全にシャットアウトすることは無理だからです。

人間の認知を左右するためのプログラムは、幾世代も経過する中で育まれる社会的認知行動の変化を必要とするものであり、簡単に変えられるようなものではありません。武力による国民統制、思想的な圧殺を徹底することによってテロを防ぐことはできるかもしれませんが、そのようなデストピアが良いとも思えません。

そのため、多様な価値観を包含する自由主義国家において事前の策として実行できることは水際対策であり、明らかにテロリストとして危険性が高い人物の入国を制限することだけだと言えるでしょう。政府はホームグロウンテロは何らかの方法によって防ぎ得ると主張するでしょうが、そのようなことは原則として無理です。

むしろ、ホームグロウンテロという防ぎようがない対象を防ぐ、という名目で、国民の思想・良心の自由、表現の自由、信仰の自由などに踏み込む各種の規制が整備されていくことのほうが社会にとっては極めて問題だと言えるでしょう。

ホームグロウンテロを防ぐことは困難であり、それ以前の水際対策をしっかりと行うこと、そして起きてしまった犯罪について厳しく処断すること、が何よりも重要であり、政府に全知全能の解決を求めることは間違っています。



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加計学園、獣医学部を1個作ることが国家戦略なのか?

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加計学園の話で何かと話題の国家戦略特区について考える

メディアは加計学園の話で忖度があったかどうかについて毎日報道を重ねていますが、筆者は「国家戦略特区」や「構造改革特区」などの既存の制度自体に疑問を持っています。

国家戦略特区は安倍政権時代に始まった国(≒首相)の主導権を強めた規制改革のための政策であり、国の岩盤規制を突破するという意味では非常に良い制度だと思います。ボトムアップ型の構造改革特区と比べて、中央省庁の抵抗を打破して規制緩和を進める上で、政治家が剛腕を振るうための制度だと言えるでしょう。

したがって、内閣府に設置される諮問会議が音頭を取って改革を断行するわけですから、その過程で政治主導で物事が実行されていくことは当たり前のことであり、本制度について忖度云々を騒ぎ立てることがそもそもおかしいと思います。

国家戦略特区の問題は「特区の内容がショボすぎる」ことではないか

むしろ、筆者は国家戦略特区の内容が政治家が剛腕を振るうという意味では、認定事業の内容がショボすぎることが問題ではないか、と思います。

「たかが獣医学部を持つ大学を一つ新設すること」が国家戦略だと言ってしまう感覚がナンセンスなのです。加計学園だろうが京都産業大学であろうが、このような無意味な規制は最初から必要なものではなく、「国家戦略」と呼ぶこと自体が恥ずかしい、この国の官主導の体質を明らかにしたものだと言えます。

獣医師免許の需給状況について、文科省や業界団体がアレコレ理屈をごねるかもしれませんが、そもそも獣医師の受給を政府がコントロールしようという発想自体がおかしな話であり、その程度の規制の緩和すら簡単に実行できない現状を問題視するべきでしょう。(政治的な意味でこの程度の岩盤を破れないというのは政治の怠慢と利権そのものではないでしょうか。)

「国家戦略」が「四国に獣医学部を持つ大学を一つ作ること」という大変残念な有り様について議論するべきであるし、国家戦略特区で認定されている事業内容は実験するまでもなく全国で認めるべきものが多数あります。

下記は国家戦略特区の認定事業の一覧ですが、そもそも規制していることが理解不能なものが多数並んでいます。当然、一つひとつは真面目に取り組んでいる事業者の方がいることは理解しますが、これを国家戦略と銘打つことについては「いい加減にしてほしい」というのが正直な感想です。農地にレストランを建てるだけのことを国家戦略って言ってみたり、そもそも国家戦略の意味が分かっていると思えない(笑)

国家戦略特区の認定事業一覧

各地域が自分の判断と責任で大学の設置の認可を判断すべきではないか
 
本件の問題は獣医学部を新設する際に国会議員や文部科学省の御意向を伺う必要がある現行体制に問題あるわけで、最初から中央政府で判断すべき性質の問題ではありません。

ある地域で獣医が足りないか否かは各地域で判断すれば良いだけの話であり、しかも本件については育成された人材は移動しますから地域的な要件自体も意味がないかもしれません。国の規制を廃止して地方が自己責任で意味がある大学を創設していけばよいと思います。

現在、忖度がどうのこうの、文書があったか否か、などのどうでも良い話題に議論が割かれていますが、政府は国会での質疑について真摯に回答すれば良いだけの話です。本来、国民が気が付くべきことは、この程度のことすら大仰な組織を作らないと実行できないという、この国のお役所体質を改革しなくてはいけないということです。

与党も野党も国家戦略特区や構造改革特区などではなく、もっとスマートに廃止すべき規制を全て公約として掲げて国民の信任を取り付けて、一気に改革を進めていくべきだと思います。

この程度の改革をチンタラと何年もかけてやっていて、「国家戦略特区」が目的として掲げる「産業の国際競争力を強化するとともに、国際的な経済活動の拠点の形成を促進する」ことなど到底不可能でしょう。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。



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yuyawatase at 00:55|PermalinkComments(0)国内政治 | 小さな政府
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