2018年10月20日

RCEP妥結、日本政府のトランプ政権への事実上の宣戦布告となる可能性を考慮したのか

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出典www.postwesternworld.com

日本政府は本気でRCEPについて年内に妥結するつもりのようだ。

上記の画像を見てほしいが、①米国抜きでTPPが発効されるとともに、②非RCEP国である米国・カナダ・メキシコがUSMCAを新たに締結、という状況がインド太平洋圏においてトランプ政権によって新たに作り出された環境である。

トランプ政権の貿易政策は事実上対中国圧力をベースとした側面が強い。

USMCAはNAFTAを改組したものであるが、その狙いは米国と他二国の貿易環境の再構築だけでなく、カナダ・メキシコが中国との間で貿易協定を独自で結ぶことを防止することを狙った内容となっている。また、トランプ政権は7月末の米欧首脳会談でも両国の貿易問題では直接関係ない知財侵害などについて事実上中国を批判する声明を行うことに成功している。直近ではペンス副大統領やポンペオ国務長官がインド太平洋地域への巨額の投資・支援を表明したばかりである。

このような環境下で、日本はインド太平洋圏における経済大国として、中国を実質的に中心に据えたRCEPを発効させるために非常に前向きな姿勢を示している。もちろん、日本がRCEPから抜けることは非現実的であり望ましくないことも確かであるが、①日米の貿易交渉が本格的に開始される、②米中の貿易戦争が最低半年程度は激化する、ことが予想されるタイミングで、日本政府が中国に助け船をわざわざ出す行為には疑問を抱かざるを得ない。

もちろんEUも米国を無視して中国との間で巨額の取引を進めることを今年の夏に新たに約束しているが、地理的環境も含めた政治リスクが全く異なる日本がこのタイミングで親中的な対応を行うことは率直に言って悪手だろう。中国政府は「トランプ政権に対抗して自由貿易を守る」ことを公言しているが、まさか日本政府はそんなお題目を本当に真に受けているのかとビックリする状況だ。

これで日本が米国と中国の間でバランスを取った外交をしていると能天気なことを考えているならお笑い種だと思う。

日本の国益は巨大な貿易パートナーである中国の貿易慣行を是正することに決まっている。

トランプ政権はRCEPに加盟する見込みの国々との貿易関係を見直し、幾つかのFTA非締結国についてはFTA交渉を求める方針を打ち出しているが、その目的は中国に有利な国際環境を構築しないようにすることにあるだろう。米国が貿易相手国に対して「国際的なルールを守れない国とは貿易協定を結んではならない」という方向に持っていこうとしていることは明らかだ。

日本が米国の同盟国として行うべき行動は、RCEPに加盟しようとしている国に対して「米国とともに中国に圧力を実質的にかけるため」に日本との貿易ルールの見直しを迫ることだろう。トランプ政権の存在は中国の貿易慣行を是正するための圧力をかける最大のチャンスであり、このタイミングに中国の顔色を窺ってRCEPを推し進めるなど愚策の極みである。

むしろ、米国側は日本がRCEPを推進している姿を「敵対的」と看做して、本来はかかるはずもない自動車関税などを事実上の報復としてかけてくる可能性がある。万が一の事態が起きた時、まさか日本側は中国側に立って米国に対抗するとでも言うのだろうか。今、この政治リスクを取ることの意味が理解できない。

日本政府は前身となる構想も含めて10年以上RCEPを検討してきて既に惰性に陥っているために、この最悪の瞬間に交渉が妥結することの意味を理解しているとは思えない。他の貿易協定のように交渉にあたってきた官僚機構の惰性で進めて良い問題ではなく、政治家は目の前に生じつつある世界の対立構造を見極めた判断を行うべきだろう。

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yuyawatase at 15:08|PermalinkComments(0)
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2018年10月19日

カバノー最高裁判事誕生が「トランプ再選」に直結する理由

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(写真はAP通信から引用)

ブレット・カバノー氏の最高裁判事承認手続きが米国上院で50対48で通過した。

本件を巡って同氏の高校時代の性的暴行疑惑が浮上したことで、9月末の承認が10月頭にまで延期される事態となっていた。そのため、今回の採決はFBIによる追加調査結果を待つ形で10月7日に連邦上院で行われたものである。

カバノー最高裁判事誕生は2020年の「トランプ再選」に直結している重要な出来事である。今回の承認人事は中道派のケネディ判事の退任に伴うものであり、保守派と看做されるカバノーが選ばれることで最高裁判事構成は保守派5対リベラル派4と大きく保守寄りに傾く。その結果は民主党側は自らの支持母体である公務員労組を弱体化させる「ある判決」を覆すことが事実上不可能になったことを意味する。

昨年スカリア判事の死去に伴うポストにニール・ゴーサッチ判事が補充されたことで、最高裁の構成は保守派5(中道派1)対リベラル派4という状況に既になっていた。この最高裁判事の構成が露骨に影響した同判決が2018年6月末に出ている。

その判決とは「公務員労組に入っていない公務員から組合費を徴収することを違憲とする」判決である。これはカリフォルニア州の教員が「非加盟員から組合費を徴収すること」に疑義を呈した訴えに対する判決であり、1977年の最高裁判決から認められてきた組合費の徴収方式をひっくり返すものであった。非加盟員から徴収した組合費は政治目的に使用できないことになっていたが、実質的に政治目的に使用されていることを問題視したものである。

米国においては公務員労組の組織率が民間労組の組織率を遥かに上回っており、民主党の選挙運動の支持母体として公務員労組は中心的役割を担っている。したがって、公務員労組の資金力が弱体化することは中長期的な民主党の党勢衰退に直結することになる。2018年の中間選挙に同判決が影響を与えるためには時間が不足しているが、2年後の大統領選挙までには公務員労組の衰退は決定的な状況になることが想定される。

民主党がなりふり構わずカバノー最高裁判事の承認に抵抗した理由は、最高裁判事の構成が保守派に一層傾くことで民主党側が同判決を覆すチャンスがゼロになることが背景にあった。米国の最高裁人事は日本と比べて政治的要素が極めて強く、表面的なイザコザだけでなくもう一段深いところまで踏み込んで分析する必要がある。

今回のカバノー判事誕生は米国の歴史に残るものになるだろう。

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yuyawatase at 08:00|PermalinkComments(0)米国政治 
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2018年10月18日

10月31日(水)19時『トランプ再選のシナリオ』出版記念講演会@八重洲ブックセンター

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渡瀬裕哉氏は、トランプ大統領の言動の分析の正確さから、国内外30社以上のファンドの支持を得るアナリスト。中間選挙目前の本イベントで、トランプ劇場のこれからと、日本への影響について独自予測します。

<日時>
2018年10月31日 (水) 19:00~(開場時間18:30)
<会場>
八重洲ブックセンター本店 8F ギャラリー
<申込方法>
1階カウンターで参加対象書籍をお買い求めの方に、参加券をお渡しいたします。
(参加券1枚につき、お1人のご入場とさせていただきます。)
また、お電話によるお申込みも承ります。(電話番号:03-3281-8201)
電話予約の方もご購入+参加券お渡し後のご入場となります。当日開場時間までにお求めください。
開演1時間前からは8階カウンターで受付いたします。

<▼参加対象書籍:『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社刊、本体価格1,500円)>
※八重洲ブックカードゴールド会員の方は、ご予約のみでご参加いただけます。会場入口でカードをご提示ください。
主催
主催:八重洲ブックセンター   協賛:産学社

*会場には来れないけれども書籍に興味がある形は下記バナーをポチっと!>

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yuyawatase at 08:00|PermalinkComments(0)
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