2018年10月27日

「安田純平」型ジャーナリストへの正しい政府対応

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「安田純平」型ジャーナリストに関する是非が盛り上がる

安田純平氏を英雄扱いする朝日新聞などのリベラルメディアや自己責任論を述べるネット世論の双方が沸き上がっている。

筆者は「政府が渡航を禁止している地域に警告を無視して入るジャーナリスト」の存在を肯定的に捉えている。そもそも好奇心あるジャーナリストに「現場に触れたいという好奇心を抑えろ」と言ったところで無意味であるし、彼らの多くは政府の警告など相手にせずに戦場等の危険地域に入っていくだろう。また、戦場の状況について複数の情報源を持つことは国民の公益増進の観点からも重要なことだと言える。

問題はテロリストに捕まって自国政府に命乞いすることになる能力不足のジャーナリストの取り扱いについて、社会的なコンセンサスが形成されていないことにある。プロを名乗るならば自らの安全を確保しながら取材することは当然であり、今回のケースのように危機管理能力が不足したジャーナリストが渡航禁止地域に入る状況を想定した準備が必要である。

能力不足のジャーナリストの無謀な行為を抑制し、優れたジャーナリストの活動を支援できる環境づくりが必要だ。

政府は「国民を助ける」以外の選択肢を持つことは難しい

日本政府に国民を見捨てろということは極めて難しい。民主主義国である日本では一定数の国民が「政府は能力不足のジャーナリストも助けろ」という意見を持つことを前提とするべきだからだ。したがって、「ジャーナリスト本人が自己責任を強調していた」としても政府が何もしないということは事実上不可能だろう。

本件についても日本政府がカタール政府・トルコ政府と協力して、安田氏の解放のために力を尽くしたことは明白である。日本政府は「2013年G8ロック・アーン・サミット」で、

「我々は,関連の国際条約に従って,我々の国民を守り,テロリスト・グループがその生存及び繁栄を可能とする資金を得る機会を減少させることにコミットしている。我々は,加盟国に対し資金及びその他の資産凍結を通じて国連アル・カーイダ制裁レジームの下で指定されたテロリストに対する直接又は間接的な身代金の支払を防止するよう求める国連安保理決議第1904号(2009年)に従い,テロリストに対する身代金の支払を全面的に拒否する。」

と宣言しているため、表向きは身代金を支払ったとは口が裂けても言えない。したがって、身代金を支払ったことにはなっていないが、それであっても、政府関係諸機関が動いて安田氏の救出に取り組んだことは明らかだろう。

これは上述の理由で、安田氏の意志に関係なく、民主主義国の政府として動かざるを得ないことが背景にある。民主主義国では国民に「自己責任だから死んでください」とは言えないのだ。

能力不足のジャーナリストの行動を抑制して納税者負担を軽減する方法の導入を

したがって、政府が能力不足のジャーナリストを見捨てる、という安価で合理的な手法を選択できない以上、それらの行動に対して費用負担を過料することが民主主義国の政府の取り得る措置として妥当だろう。何らかの法規を無視した場合に賠償や罰金を支払わなくてはならないことと同じ原理だ。

具体的には、政府関係諸機関が費やした税コストに身代金分に相当する罰金を合算し、当該ジャーナリスト個人に支払わせる仕組みを導入するべきだ。政府は「身代金を支払った」と公式には発言できないので、予め身代金相場に基づく罰金も見積もって設定しておくべきだろう。

公益に基づく活動とは必ずしも税金によって行われる必要はない。仮にジャーナリストの活動が本当に公益に資するものであるなら、上記の賠償・罰金について、その活動が公益に資すると信じている支持者が寄付をして弁済すれば良い。

優れたジャーナリストであれば政府に費用を弁済することできるし、能力不足のジャーナリストは渡航をためらう様になるだろう。自己責任は義務と能力を前提として成り立つものであり、義務も能力もない自己責任はそもそも存在し得ない。

「安田純平」型ジャーナリストの問題とは、政府が「渡航禁止地域で取材開始直後にテロリストに拘束される能力不足のジャーナリストに対する法律上の罰則」を明確にしていないことに起因する。再発防止のために当然の議論が行われることに期待したい。

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yuyawatase at 02:23|PermalinkComments(0)
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2018年10月25日

サウジアラビア人記者殺害疑惑を巡る陰謀の対立構造を考える

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(Jamal Kashoggi記者)

サウジアラビア政府に一貫して批判を行ってきたジョマル・カショギ記者がトルコのイスタンブールにあるサウジアラビア総領事館で姿を刑した事件によって、トランプ政権の対中東政策の根幹を揺るがす事態が発生している。

中東地域における対立構造は世界のイスラム化を掲げる原理主義「ムスリム同胞団」の勢力とサウジアラビア王家のような世俗の政治勢力の間のパワーゲームにある。したがって、本件もサウジアラビアの王政を批判していた記者が殺害された疑いがある事件として単純に捉えることは難しい。

米紙ウォールストリート・ジャーナルがトルコ政府が入手したというカショギ氏殺害時の音声は社会的な衝撃を与えているが、最近同紙はトルコ政府の主張を掲載しすぎる傾向があるように感じている。シリア政府軍によるイドリブ地方の反政府派を攻撃する直前、同紙はエルドアン大統領による一方的な主張の手記をそのまま掲載していたことが記憶に新しい。

トルコのエルドアン大統領はムスリム同胞団に近いスタンスを取っており、エジプトにおいて軍のクーデターで同胞団政権が倒れた際に激しくエジプト軍を批判した経緯がある。そのことを巡ってトルコは湾岸諸国の王政と対立しており、現在でも中東地域における両者の影響力争いは深刻なものとなっている。

そのトルコが提供した情報だけでサウジアラビアを断罪することは早計と言えるだろう。一部の報道では、カショギ氏はムスリム同胞団支持者であり、同氏が結婚を予定していた女性(総領事館前で待っていたとされる)は、トルコ政府情報員だったとの情報も飛び交っている。トルコ政府もカショギ氏が殺される可能性を十分に考慮した上でハナから動いていたように感じられる。

サウジアラビア政府が実際にカショギ氏に手を下したかどうか、更にそれがどのように行われたものか、について世界が注目しているが、そのこと自体についてはサウジアラビア政府の「弁明」でしかないものと思う。この弁明が与える政治的影響については未知数であり、トランプ政権がこの難しい状況への対処をどのように行うのか見物である。

いずれにせよ本件は複雑な背景を持った陰謀の対立である可能性が高く、中東における政治対立や人権感覚の無さが浮き彫りになったと言えるだろう。

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yuyawatase at 16:41|PermalinkComments(0)
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2018年10月24日

生物学上の男性が女性オンリーの競技に参加して1位になることに関する論争

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女性オンリーのスポーツ競技でトランスジェンダーの人物の競技参加を認めるかどうかが論争の的になっている。通常の場合、トランスジェンダーの女性が生物学的に男性の肉体を持ったまま競技に参加することは身体構造上圧倒的な優位さを持つことになる可能性が高い。しかし、この競技参加問題をトランスジェンダーの権利の問題として幅広く解釈すると、我々の社会はこの問題に現実的に向き合って回答を得る必要が生じてくる。

実際、カリフォルニア州で行われたUCI Masters Track Cycling World Championshipsという自転車の世界競技の35~39歳女性部門の優勝者は、カナダ人のトランスジェンダーの女性であった。この結果については、もちろん本人の競技者としての努力は前提ではあるものの、トランスジェンダーの人物の競技参加が競技上の優位性の問題ではなく人権の問題として取り扱われたことの影響の大きさを否定することは難しい。

日本の多くのスポーツ競技関係者はこの問題について我が事として深刻に捉えるべきだろう。リベラルな空気が世界中に拡がりつつある中で、全ての競技関係者がこの問題といつまでも無関係でいられるわけではないからだ。仮に、トランスジェンダーの競技者の参加を正当な理由なく拒んだ場合、事と次第によっては訴訟に発展する可能性すら存在する。

また、スポーツに限らず、性差の問題はパンドラの箱のようなものであり、本質的には男女だけでなく無数に存在する性の在り方について対応を迫られるものだ。そのため、安易に多様性が大事と口にするだけではなく、どこまで何を社会・コミュニティとして許容するのかという議論が行われるべきだろう。

筆者はスポーツに関しては男女の別をやめて全ての人類間で無差別に競争したら良いと思うが、一朝一夕にそのような形になるわけがない。「性」を巡る問題については奥深いものがあり、人間の知性による熟慮が求められる分野と言えるだろう。

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yuyawatase at 08:00|PermalinkComments(0)
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