2017年08月07日

トランプ政権・200日、政治任用の進捗状況は?

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(Daily Signal@The Heritage Foundationから引用)

トランプ政権の政治任用が一気に進みつつある?

8月4日トランプ政権の政治任用ポストのうち約60ポストが一度に上院で承認されたことで、トランプ政権の政治任用任命ポストは合計124ポストが埋まることになりました。つまり、1日で政治任用の任命ポストの少人数が倍増することになりました。

トランプ政権の政治任用ポストの任命は前任者らと比べて遅れており、近年では政治任用の承認に苦戦したジョージ.H.W.ブッシュ政権の60%程度の承認スピードとなっています。そのため、トランプ政権の体制は就任200日経った現在であっても十全に整った状況とは言えません。

原因は、ホワイトハウス側からのノミネーション数が少ないこと、上院民主党が党派的な抵抗を示していることなど、様々な要因が考えられますが、いずれにせよ大統領と連邦議会との関係が良好ではないことの証左と言えそうです。

国務省・国防総省関連から埋まり始めているトランプ政権のポスト

米国政権は4000人以上の政治任用を実施する必要があり、そのうち1200人以上が上院の承認を受ける必要があります。、任用職の任期が切れていない場合や大統領が空席を望む場合もあり、初年度に全ての政治任用職が任命されるわけではありません。

現在承認を受けた政治任用職のうち、省庁別で多い方から並べると、国務省関連は25名、国防総省は15名、司法省は9名、財務省8名、商務省7名、厚生省7名、国土安全保障省6名、その他の省庁は若干名となっています。

全体的にオバマ政権よりも任命ペースが大きく遅れていますが、国防総省だけ見ると、同時期のオバマ政権21名に対して15名ということで、それなりに進んでいる印象を受けます。国務省の人事の大半は各国大使の枠が埋まって来ている状況です。

今後も外交・安全保障関係の人事から埋まっていくことが予想されるものの、NSCを巡る人事の混乱などからスムーズに政治任用の上院承認が進むかは依然として疑問です。

政治任用職の任命が遅れこそがトランプ政権が戦っている証拠と見る向きも

トランプ政権の政治任用職の承認が遅れている理由は、民主党政権時代に回転ドア方式で民間に放出されていた政治関係者の登用の受入れを積極的に進めていないことに原因があります。

日本でも外交・安全保障関係で著名なシンクタンクCSISに属する共和党系の人々も昨年の大統領選挙でヒラリー・クリントンを応援する署名を発表するなどトランプに敵対的な態度を取ってきました。そのため、トランプ政権はCSISと良好な関係にないため、外交・安全保障の人材登用に苦戦している状況にあります。

当初トランプ政権の政策立案を全面的に担ってきたヘリテージ財団も、トランプ政権と非常に近しい関係を維持しているものの、5月頭にトランプ政権と過度に接近したジム・デミント所長が突如解任される事態が発生しています。政権周辺の共和党系シンクタンクとトランプ政権の関係も必ずしも安定しているわけではなさそうです。

また、トランプ政権は大統領令でロビイストの徹底的な追放を実施していることから、腐敗したワシントン政治にどっぷり漬かっている人々を採用することも難しく、外交・安全保障関係以外の国内政治井関する分野においても人材を登用することが困難となっています。

これらはトランプ政権の政権運営能力に疑問を投げかけるものの、逆の見方をするとトランプ大統領が就任演説時に述べた通り、ワシントン政治を戦っている証拠でもあると言えるでしょう。今後、政治任用職の任命スピードが上がっていくであろうことが予測されますが、どのような人々が登用されていくかはトランプ政権の性格の変化を見定める上で重要な要素となります。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。出版依頼、取材依頼、講演依頼、メディア出演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。



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yuyawatase at 22:00|PermalinkComments(0)米国政治 
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2017年08月06日

北朝鮮、トランプ政権の奥手は”海上封鎖”

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北朝鮮への制裁措置には依然として猶予が残されている

北朝鮮の7月ICBM2度の発射を受けて国連安保理が全会一致で北朝鮮に対する制裁決議を採択しました。これにより、北朝鮮の主要輸出品である石炭、鉄・鉄鉱石、鉛・鉛鉱石、海産物などの輸出の例外の無い形での受入れ禁止が実施されることで北朝鮮経済に大打撃を与えることになります。トランプ政権としては、まずは年間輸出の3分の1を占める輸出品目に制裁を加えることによって北朝鮮への締め付けを強化したことになります。

ただし、北朝鮮への石油輸出は未だ禁止されておらず、北朝鮮の生命線は首の皮一枚繋がった形となっています。したがって、北朝鮮はこの程度の妥協策で懐柔されることはなく、今後も反米の立場を崩さずに核とICBMの開発を継続していくことになるものと思われます。そのため、トランプ政権は、中国への北朝鮮対応のプレッシャーをかけながら、北朝鮮の金正恩政権自体への圧力も強化していくことになります。

トランプ政権の奥の手は”北朝鮮に対する海上封鎖”の実施

今後、北朝鮮が核実験やICBM発射実験に再び踏み切った場合、トランプ政権は北朝鮮への石油輸出を禁止する措置に方向に強烈に舵を切ることになるものと予想されます。その際、同措置に現実性をもたせるためには、北朝鮮に対する海上封鎖、を実施することになるでしょう。北朝鮮への海上封鎖は金正恩政権に対する最後通牒となり得るため、筆者は同段階に至るまでに北朝鮮問題が解決することを望んでいます。

一方、日本政府は船舶検査に関して様々な法的制限をいまだ課しているため、トランプ政権が海上封鎖に踏み切った場合に同盟国として同作業に協力することが困難となっています。国会議員は憲法ごっこはいい加減に見直し、現実の脅威に備えることが重要だと思われます。(たとえば、船舶への強制的検査を警察権行使の範囲内として含め直すなど。)

安倍政権は憲法改正を一旦見送るとのことですが、現実の目の前に起きている脅威への対応に注力するという判断は妥当であり、現実の安全保障を置き去りにしてイデオロギー闘争を日本国内で実施する愚を犯すべきではありません。憲法については無意味な「ためにする」議論を無視して解釈で乗り切って必要な法改正を粛々と実施するべきです。

”海上封鎖、在韓米軍家族の出国、空母の大量動員”というシグナル

米軍による「海上封鎖、在韓米軍家族の出国、空母の大量動員」は北朝鮮有事のサインであり、現在は依然としてその段階には至っていません。そのため、北朝鮮有事を過度に強調する状況ではないと思います。

しかし、金正恩政権の呼吸を止める水面は徐々に上昇しているため、今後北朝鮮で有事が起きないと断言できる状況ではなくなりつつあります。あくまでも現在時点の状況を見ている限りでは「北朝鮮有事には数段階の猶予がある」というだけのことに過ぎません。

今、日本人が行うべきことは「憲法改正論議」ではなく「現行憲法下で無理やり有事対応する」ための議論であり、政治資源をイデオロギー闘争に割くような段階は既に過ぎつつあることを自覚すべきです。

筆者は「現行憲法下でも安全保障体制を早期に整えることができる政治家」こそが有能だと考えており、国会議員には現実の問題への対処を責任を持って実施することを望みます。

「憲法を変えないと有事に対応できない(ただし、憲法改正はハードルが高い)」という無駄な議論はやめてもらって、どのような批判を受けようが現行憲法でも「安全保障上やるべきことをやること」は当たり前だという認識を持って頂きたいと思います。






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2017年07月29日

オバマケア・国境税調整、既得権に屈服したトランプ政権

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Drain the swamp(ワシントン政治の沼掃除)の夢は潰えた

オバマケア見直し・廃止法案、そして縮小版のスキニー法案も、トランプと敵対する大富豪のコークの支援を受けるフリーダムコーカスと事実上民主党員と同じ行動を行うRepublican In Name Only(名ばかり共和党員)の抵抗にあって、連邦上院の採決で頓挫することになりました。

連邦上院は共和党52議席対民主党系48議席ではあるものの、スーザン・コリンズ上院議員に代表される名ばかり共和党員が多数存在しているため、実質的に共和党は過半数ギリギリの議席を確保しているだけに過ぎません。そのため、名ばかり共和党員らが数名反旗を翻すだけで、Drain The Swmp(ワシントン政治の沼掃除)を求める共和党保守派の夢は潰えることになります。

共和党保守派にとっての悪夢は、オバマケアの廃止・見直しの道が途絶えたこと、そして税制改革案から国境税調整が排除されることで、法人税や所得税の恒久的な大規模減税を求める財源は消滅することになったことです。つまり、当初トランプ大統領が15%、共和党保守派が目指した20%の法人税率を実現することは不可能となり、約27~28%程度の減税(大企業の多くは既存制度を利用して既に達成)に留まり、事実上の意味がほとんど無くなることになります。

また、国境税調整という一律のルールによる財源が無くなることで、恒久的な税制改革を実施するためには、各産業への個別の細かい課税案の議論が必要となり、腐敗したロビーによるワシントン政治ビジネスは益々活発化することになるでしょう。個別の業界団体との交渉は政治腐敗の温床であり、トランプ政権を奪取するにあたって共和党保守派が米国政治から一掃することを狙ったものでした。

トランプ政権は、ウォール街から連れてきた財務長官・国家経済会議議長、企業と癒着するミッチー・マコーネル上院院内総務らの主流派、大富豪のコーク氏による巨額の費用をかけたキャンペーン、に取り込まれてワシントン政治の沼の一員となりました。

共和党保守派とトランプ政権の全面戦争が始まる可能性が発生

トランプ政権は元々共和党保守派が支持したことで生まれた政権です。しかし、トランプ大統領は彼らが最も重視するオバマケアの廃止・見直し、減税政策などの税制改革案で完全に共和党保守派の願いを裏切る形となりました。(コーク財団の影響下にあるリバタリアンも報道などで保守派と表現されますが、この場合はレーガン保守系の他団体を指すものとします。)

本来はトランプ大統領が主導権を発揮することを通じて、両法案が議会で承認される可能性もあったわけですが、トランプ大統領は最後まで様子見を決め込んだ上、両案ともに不成立・骨抜きという結果に終わりました。その上、ワシントン政治にすっかり取り込まれた姿を共和党員に対して見せています。

トランプ政権下における米国政治の改革は、完全に骨抜きになった、と言えるでしょう。

共和党保守派の人々は「民主党政権ではなく共和党政権である」という消極的理由でトランプ政権を支持してきました。その結果がトランプ政権の支持率の40%前後での下げ止まりという形となって表れていたわけです。

形式だけの骨抜きの成果を保守派の人々が評価するとは思えず、今回の主要政策の公約に関する裏切りによって、今後は共和党員からの支持も瓦解していく可能性が出てきました。トランプ大統領の首を共和党保守派が本気で取りに行くのか、それとも同大統領の下で我慢をさせられるのか、いずれにせよその過程でトランプ大統領は共和党保守派からの本気の反抗を目にすることになるでしょう。

最後に、減税幅の縮小は、来年2018年の米国経済の腰砕けに繋がる可能性もあり、共和党が中間選挙で敗北した場合、トランプ大統領のロシアゲート問題が再燃していくことになります。トランプ大統領は目の前の政治的な困難に屈服して重要な決断を失敗した、と言えます。




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