2015年11月06日

支持率の変化から見た共和党大統領選挙予備選挙

大統領選挙2011106

米国大統領の共和党予備選挙は非常に長期間に渡って行われるため、各候補者のデータを見ているだけで楽しむことが可能です。各人の推移を見ていると、候補者の支持率の浮き沈みの理由を知ることができます。(http://www.realclearpolitics.com/epolls/2016/president/us/2016_republican_presidential_nomination-3823.html

ベン・カーソンの支持率は何故伸びているのか

黒人医師のベン・カーソンの支持率が爆走していたトランプと並んできています。何故、ベン・カーソンの支持率が伸びているかというと、同じ保守派のスコット・ウォーカー・ウィンスコンシン州知事が撤退したことによります。ベン・カーソンの支持率が伸びると同時にスコット・ウォーカーの支持率が落ちています。

ベン・カーソンは保守派の踏み絵である「納税者保護誓約書」(全ての増税に反対する署名)に11月2日署名したため、今後もベン・カーソンが伸びていく流れはしばらく継続することになると思います。全米税制改革協議会が管理する同誓約書は米国においては保守派であることの証明書の役割を果たしており大変に重要視されています。

大統領選挙推移

ジェブ・ブッシュの支持率は何故上がらないのか

ジェブ・ブッシュの支持率はマルコ・ルビオとジョン・ケーシックの支持率との間で関係性が見られます。ジェブ・ブッシュの支持率はマルコ・ルビオとジョン・ケーシックの支持率が上がる度に低下している形になります。

マルコ・ルビオは元々保守派として知られていましたが、移民問題への弱腰な姿勢を問われて徐々に穏健派にも軸足を置くようになり、現在は穏健派の代表格であるジェブ・ブッシュとの支持層が被るようになっています。二人の地盤がフロリダ州という意味でも競合が激しい状況です。

ドナルド・トランプの支持層は他の候補の支持層とは一線を画している

ドナルド・トランプは独自のトランプ支持層を形成しており、他の支持者の支持率の浮き沈みから影響を受けにくい状態になっていることが分かります。そのため、トランプ支持層が決定的に瓦解することは現時点では予想し難い状況です。

米国の保守派の選挙運動は「草の根組織による盛り上げ」が重要です。ベン・カーソンらの保守派の候補者はこの盛り上げ効果によって急激に支持率が変動する特徴があります。そのため、一度流れが変わると支持率の上げ下げが激しい傾向があります。保守派にはベン・カーソン以外の選択があるため、現在トランプに肉薄しているベン・カーソンは支持を落とす可能性もあります。

共和党大統領予備選挙の本番は年明けから開始

現状の予測ではどのような展開になるかは分かりませんが、現在の自分の予想では、ドナルド・トランプ、マルコ・ルビオ、ジェブ・ブッシュの3つ巴になるのではないかと思っています。

独自の支持層を固めるドナルド・トランプが脱落していく保守派の支持者をどれだけ取り込めるのか、マルコ・ルビオが着実に穏健派からの支持を集めつつ保守派の受け皿にもなれるのか、ジェブ・ブッシュがルビオから穏健派の支持を取り戻すことができるのか。

勝負の予測は全くつかない状況ですが、共和党の米国大統領候補者選びが日本に与える影響は大きく、今後も注意深く見守っていきたいと思います。





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yuyawatase at 17:00|PermalinkComments(0)米国政治 
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2015年11月05日

大阪W選挙、入閣、参議院議員選挙へ(という予測)

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本日は大阪府知事選挙の公示日であり、8日の大阪市長選挙と合わせて大阪W選挙のスタートということになります。ただし、報道等の世論調査の状況を見ている限りでは大阪府知事選挙は現職の松井府知事の勝利はぼぼ確定的だと思います。
 
そもそも自民党は大阪W選挙に本腰を入れていない

少なくとも大阪府知事選挙について自民党側は本気ではないことは明らかであり、これには何らかの意図があると勘ぐられても仕方がない状況だと言えます。

自民党が推薦した栗原府議は知事選挙を戦うには知名度などの問題から非常に弱い候補者であり、当然に知事選挙に連動する市長選挙にまで影響を与えることになります。(市長選挙の方は反橋下でTVなどに露出していた柳本市議を擁立したことで吉村氏と勝負にはなると思います。自民党の共産党との協力がどのような結果になるかは興味が尽きません。)

そのため、世論調査で厳しい見通しが出ている市長選挙で維新が勝利することになれば、様々な形で来年の参議院議員選挙に影響を与えることになるでしょう。

大阪都構想の住民投票前から飛び交っている橋下氏の入閣話

大阪都構想の住民投票前から橋下氏の入閣は政界やメディア関係者の間で噂になっては消えてきました。

そして、維新の党からおおさか維新の会を分離して、橋下氏が一旦政界から身を引く形になる現在の状況は橋下氏入閣の可能性が一層強くなってきているものと思います。

市長引退によって橋下氏は時間や身分の制約から解き放たれて自由にメディアに出られるようになります。その上でメディア露出を繰り返し、自らへの期待度を回復させることを通じて政治的な商品価値を高めることができます。

期待感が醸成された段階で自民党側から民間大臣としての入閣を打診されることで、橋下氏とおおさか維新が連立の枠組みに加わることになります。その際の予定されるポストとしては、総務大臣か憲法改正担当大臣など、噂は飛び交うものの真偽のほどは定かではありません。

橋下氏が民間大臣として参議院議員選挙に出馬する可能性

ただし、選挙の得票を背景に持たない民間大臣の政治的な弱さは橋下氏も熟知しているでしょうから、仮に入閣した場合、その後の参議院議員選挙の全国比例区に出馬する可能性も高いと思います。竹中平蔵大臣が民間大臣で入閣後に参議院議員として出馬したときと同じシチュエーションということになるでしょうか。

参議院議員選挙におけるおおさか維新の党の役割は「民主党」らの護憲勢力の比例得票数を削ること、東京・大阪などの大人数が選出される選挙区で民主党の議席を削ることでしょう。これらは自民党単独では難しいため、自民党とおおさか維新の会と橋下氏との利害が一致することになります。

野党が散り散りに分散している状況は、自民党にとって非常に都合が良い状態であり、自民党の政局運営の巧みさが光る昨今の状況となっています。私は上記のシナリオもかなりある話かなと思っていますが、読者の皆さんはいかがでしょうか。

もう一つの可能性としての野党再編という路線

もう一つの可能性としては野党再編も考慮されるべきでしょう。大阪W選挙終了後、大阪府内における大型選挙は無くなります。つまり、4年間のフリーハンドがおおさか維新の会には与えられることになるわけで、彼らが自民党に対して筋を通し続けるかどうかは疑問です。

その際、共産党との連携の是非で動揺している民主党から旧同盟系・松下政経塾系の保守系の議員たちを引き抜き、渡辺喜美氏、みんなの党の残存勢力、次世代の党に声をかけて、新たに保守的な野党を結成する可能性もあります。政治家は簡単に人間関係の良し悪しを乗り越えて離合集散するものです。

いずれにせよ、来年の参議院選挙が終わった後には現在の政権・政党の枠組みは大きく変わっていることになるでしょう。





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yuyawatase at 17:00|PermalinkComments(0)国内政治 
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2015年11月04日

朴槿恵大統領・反日の韓国に伝えるべきこととは何か

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まず初めに申し上げますが、私は韓国政府が産経新聞の支局長を起訴した件などについて文明国として論外だと思っています。ただし、本件からも韓国は極めて危険な政治的な状況に突入していることも同時に分かります。

韓国の自由主義・民主主義は衰退しつつあるということ

上記の産経新聞支局長への言論弾圧的な起訴や親日派の先祖を持つ人々に対する財産没収などの野蛮な法律について日本側は厳重に抗議すべきです。

そして、自由主義や民主主義を標榜しているはずの韓国国内においても、道理として言論の自由や生命・財産の自由の観点から韓国政府への非難が当然にして起こるべきだと思います。

しかし、韓国国内でそのような声が大きくなっているということは無いようです。この状況は韓国が反日化しているのではなく、韓国の自由主義・民主主義自体が衰退していることを暗示しています。そもそも、彼らが反日的なのは昔からです。

東アジア・東南アジアで起きつつある「中国化」という新たな脅威

筆者は東アジアや東南アジアで「中国化」という新たな脅威が拡大しつつあると危惧しています。

「中国化」とは、自由、人権、法の支配などの近代国家としての基本的な価値観の衰退を表現したものです。全体主義国家である中国の影響力拡大と自由主義国である米国の影響力後退によって「中国化」がアジア各国で進展しつつあります。

「中国化」は明確に中国支持を表明するのではなく、中国の直接的・間接的な影響を受けて、自由主義・民主主義の価値観が後退することによって達成されます。上記の韓国の事例は歴史問題を背景としつつも、韓国が自由と民主主義を失った「中国化」の途上であると見なすことができます。

そして、その恐ろしさは「反中」を叫ぶ政治勢力が、結局は「中国化」を推進しているケースもあるということです。

たとえば、南アジアにおける中国の人工島問題は大きな注目を集めていますが、実は中国と領土問題を抱えている各国も中国と同様に岩礁への軍事施設の設置を小規模ながら実施しています。これは米政府も中国に対してあくまでも「やりすぎ」と指摘していることからも明らかです。

これらの行為は中国への対抗措置として取られたものですが、反中姿勢の各国の表向きの「法の支配」からは逸脱した競争に入りつつあります。

日本は「中国化」の脅威に対抗する自由主義の防波堤

東アジア・東南アジアにおいて日本に求められる役割は「中国化」の脅威に対する自由主義の防波堤です。

日本は同地域において、最初に議会を開設した自由主義国であり、普通選挙制度などの導入に関してもいち早く実現された国でした。そして、それらの政治制度を導入した結果として、日本はアジア随一の経済発展を実現することになりました。一方の中国は清国時代に日本よりも早く西洋化に取り組みましたが、清国の腐敗した政治制度が足かせとなり、日本の後塵を拝すことになりました。
 
明治時代への突入と同時に西洋の優れた政治システム自体を取り入れた日本に軍配があがった形であり、戦後においても共産主義・全体主義に傾いた中国を置き去りにして、日本は西側陣営として政治的・経済的な繁栄を維持・発展させることに成功しました。

日本は東アジア・東南アジアにおいて最も長い「自由主義」「民主主義」の歴史を有する国として、その重要性についてメッセージを発信していくべきです。

「中国化」への誤った処方箋を投じる人々

一方、プレッシャーを強める中国に対して、日本国内の中国に対する危機感も高まりつつあります。しかし、危機感の高まりは必ずしも適切な処方箋とセットになっているとは限りません。

中国や韓国の未熟な点を挙げて、相手国の国民自体を罵倒するようなレベルの低い行為は、日本国内の排外主義的な空気をつくりあげていくことになります。まして、政権与党の「自由民主」党が、自由主義・民主主義・人権に逆行する改憲草案のような代物を堂々と掲げていることには唖然とします。

さらに、中国の市場経済の発展を国家資本主義によるものと誤解し、日本国内で政府の経済的・社会的な役割を増加させていこう動きも「中国化」の最たるものでしょう。日本は自由市場を更に発展させることで繁栄を実現するべきです。

日本が東アジアや東南アジアに発するべき自由のメッセージ

現在、日本から発信されているメッセージは、最近の安倍外交では若干の改善が見られるものの、日本の修正主義者による歴史観の見直し、そして高齢化・福祉国家化による衰退ばかりとなっています。

日本から発信すべきメッセージは、社会の健全な発展のためには自由主義・民主主義が重要であるということ、国際社会のルールとして法の支配は重要であるということ、政府の規模拡大が招く経済衰退を回避する必要があること、など、日本が歴史の中で学んできたことを率直に伝えていくことです。

そして、その言葉を相手政府の人間だけでなく、相手国の国民に届くように地に足の着いた情報発信を心掛けていくこと大事です。そのようにしていくことで反日と「中国化」著しい韓国の中でも心ある人たちとの連帯が生まれていくものと思います。

米中 世紀の競争 ―アメリカは中国の挑戦に打ち勝てるか
ジェフ・ダイヤー
日本経済新聞出版社
2015-06-25


 



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