2017年03月24日

東京都の政党は「地方交付税」問題を争点にすべき

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政治家にビジョン形成を求めること自体が時代錯誤ではないのか

宇佐美典也さんの「都議選は「空前絶後で超絶怒涛な公約」を待望してます」を読んで、やはり元官僚の方は言うことが違うなと思いました。

政治家はビジョナリーな空前絶後で超絶怒涛の公約を語ることよりも、現実の財布(=税金)の話をすることが本来の仕事であり、税支出の使途の妥当性を問うべきです。彼らは納税者の代表であって妄想を語ることは仕事ではありません。

政治家や官僚に社会のビジョン形成を求めること自体が時代錯誤であり、革新官僚的な発想で「政治にビジョンの提示を求める」という行為をやめていくべきでしょう。

東京に基盤を置く政党が地方交付税や地方バラマキ政策を問題にするのは当たり前

筆者も維新の会の「議員定数5分の1」は全く意味不明だと思いますが、都民ファーストの音喜多都議が地方交付税の在り方を問題にすることは東京都に基盤を置く政党の幹事長として至極当然のことだと思います。

年間7兆円以上も東京都内から流出している「みみっちい」税金の話を看過できるほど、東京都民は非現実な世界に生きているわけではありません。

宇佐美さんが主張する「東京の出生率を2.5まで引き上げる」とか、「75歳まで働ける社会」とか、「観光消費を倍増させて経済を成長させる」とか、「生活コストの引き下げ」などは東京都民の手に資金が残っていればある程度解決可能な問題です。このような政治家の対処療法的な個別のレトリックではなく、東京都からの税流出を防止することは問題の根治に繋がります。

東京に基盤を置きながら、都議会だけでなく国政に候補者を立てる準備を推進している「都民ファーストの会」の都議会幹事長が税金の話をすることは当たり前です。

まして、筆者も音喜多氏も東京出身者であり、それらの人々の声、そして地方から出てきて東京で子育てしている人々の声を代弁しても何ら不思議でもありません。

また、東京と地方の共存共栄とは、東京一人勝ち&地方へのバラまき、を前提とした関係ではなく、東京と地方が独立・協力・競争しながら一緒に栄えるものだと考えます。

必要とされるものは政治家の「口約束」ではなく、民間の力を信頼する「契約」だということ

筆者が都民ファースト会などに期待する都議会議員選挙の公約は、宇佐美さんが共感を示したような石原氏の「〇〇やります」的な公約ではなく、「〇〇やりません、東京都民の手にお金と権限を戻します」というものです。

豊洲新市場一つをとっても移転するか否か以前に、行政機関は意思決定までに時間がかかりすぎて、元々想定していた事業環境と大きく変化が生じてしまうことはザラだと思います。(豊洲市場は大赤字!金融の視点で見える事業面での大問題)小池知事が移転を早期に実行したところで、東京都庁が無能な投資家であることに違いはありません。

宇佐美さんと筆者は同年代ですが、東京都の政治家と都庁の役人に夢を見せてもらう必要はありませんし、むしろ政治家と役人は余計なことをせずに粛々と行革、減税、権限移譲・規制緩和を進めてほしいものと思います。

宇佐美さんが我々の世代を代表されるようなことをおっしゃっていたので本稿に引用してしまって申し訳ありませんが、意見が違う人もいるよということで大目に見てください。

政治家が考える「日本の中で東京がどのような役割を果たすべきか」を具体化した「空前絶後で超絶怒涛な公約」でげっそりさせられるよりも、日々をコツコツと生きている東京都民の生活が豊かになる政策をやってもらう方向性でお願いしたいものです。

これ以上東京都民の税金を政治家や役人のおもちゃに使う行為をやめること、次回の東京都議会議員選挙に一都民として唯一期待しております。起きながら見る夢とは民間人が努力する中で見るものであり、政治家ができることはそれを邪魔しないことです。
 





本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。
 


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2017年03月22日

百条委員会で感じた「豊洲」とは関係ない話

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豊洲の地下水汚染にはほとんど関心がない筆者が思うこと

豊洲新市場の地下水汚染と東京ガスとの土地売買契約を巡る経緯に関する石原氏と浜渦氏に対する百条委員会が終りました。かつての大物知事と辣腕副知事が登場してなかなか見応えがある質疑が成されたものと思います。

しかし、筆者は「豊洲新市場にさっさと移転したら良いんじゃないの」 派なので、百条委員会で石原氏らに環境基準が意味がなかったことを認めさせる一定の意義は認めつつも、質疑内容とは正直言って全然関係ないことが気になってしまいました。

2005年の百条委員会で偽証認定されて辞任した元副知事が天下りしている事実

浜渦氏は副知事時代に議会にやらせ質問を依頼したことを問われた2005年に行われた百条委員会で「偽証」を認定された方です。つまり、百条委員会での偽証なんぞナンボのもんよ、という胆力を持った方ということになります。

結局、浜渦氏は偽証認定されたことで都議会で問責決議を受けて副知事を辞職することになったのですが、まさかその直後に「東京都の第三セクター(東京都交通会館)に副社長になった」とは驚きました。

東京都における議決機関である都議会で「偽証」し「問責決議が可決された」人物に天下りを認める東京都とはどれだけ腐敗した組織なのか、と率直に思います。私自身は浜渦氏が辣腕な方だと耳にしたことはありましたが、副知事以後のポジションは知りませんでしたので、正直言って唖然としました。

石原慎太郎氏が百条委員会で問われるべきは「新銀行東京」の末路ではないのか

石原氏が百条委員会で問われるべき問題は新銀行東京の内実でしょう。新銀行東京は議員の口利きやヤクザものなどによって都民の税金が食い物にされたと噂されている事例です。その杜撰な経営について石原氏に対する住民訴訟も起きています。

筆者としては、本件は納税者の血税を政治家が浪費した最たる事例であったように感じています。豊洲新市場よりも政治責任を問われるべきものであり、その設立からの経緯を徹底的に見直されるべきものです。そして、二度と政府が金融という愚策に新たに手を出さないようにする戒めとすることが重要です。

石原慎太郎氏には百条委員会で今度は新銀行東京の顛末についてじっくりと語って頂きたいものだと思いました。

今回の豊洲に関して、今までの証言をそのまま信じるならば、都知事・副知事が与り知らぬところで、都民に不利益な契約内容を結んだことが明らかになったわけですが、そのようなガバナンス上の問題が発生しないようにすること、更に政治家の都合で新銀行東京のような大失敗が二度と発生しないようにすることをもう一度確認するべきです。

政治家は60歳程度を限度に定年したほうが良いということ

石原慎太郎氏が脳梗塞を患って体調不良のため、彼の百条委員会は1時間で終了しました。その上、非常に明瞭に記憶していること、記憶から無くなってしまったこと、が混在しており、高齢になっても自分に都合が良いことは覚えているものだなと人の記憶の在り方に感心させられました。

しかし、東京都知事のような重大な意思決定を為す要職についていた人が職責から退いて僅か数年で全ての記憶が無くなってしまうことは問題でしょう。日常的に忙しくて過去のことは忘れてしまうのも理解できますが、具体的な証言や資料が出てきたら思い出すことも多いのではないかと思います。

そこで、首長職などの重要な職責を担うポジションの人は比較的健康体である60歳くらいまでを上限に設定するべきなのだろうと思いました。高齢化社会以前は何歳の人でも要職に座っても良いということは道理がありましたが、現状のような長寿社会では少し非現実な気がします。

立候補に制限をかけるわけにはいきませんので、有権者は投票判断に際して「年齢」というものをもう少し気にしても良いのではないかと感じました。

石原都政に関する検証、その失敗を繰り返さないために

石原都政は長期に渡るものでしたが、久しぶりにその流れにない都知事が誕生したことで、石原都政の功罪について徹底的に検証を加えて反省材料にすることは重要なことのように思います。

石原氏には財政健全化などについては一定の功績はあったと思いますが、東京都の隠蔽体質・官僚体質、放漫な財政運営、政治家による口利きなど、注目が集まっているうちに全て掃除することが大事でしょう。

百条委員会を見ながら、一時代の終わり、そしてその反省の必要性を感じてしまったわけで、同委員会はそのための象徴的な意味はあったかなと思います。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。

 

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yuyawatase at 12:35|PermalinkComments(0)国内政治 | 社会問題
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2017年03月20日

トランプの黒幕?スティーブ・バノンの微妙な立ち位置とは

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スティーブ・バノン首席戦略官はトランプ政権の黒幕なのか? 

最近の報道などではスティーブ・バノン首席戦略官への注目が高まっているようです。

散々オルト・ライトを馬鹿にしてきた日本人有識者もバノンの存在感の大きさが無視できなくなりつつあり、欧米メディアがバノンの報道を増やすのに合わせて解説記事などが増えてきました。

たしかに、バノン首席補佐官はトランプ政権の意思決定について重要な役割を果たしていると思います。現在のトランプ政権における最重要人物の一人と言えるでしょう。しかし、バノンのトランプ政権内での立ち位置は共和党内の派閥争いの微妙な均衡の上に成り立つ砂上の楼閣でしかありません。

トランプ政権内での影響力を過大評価する論調には全く同意できず、彼も広義の保守派の中の一つのパートを担っている存在として冷静に認識していく必要があります。

スティーブ・バノンの人生、そして力の源泉とは何か

スティーブ・バノンの父は朴訥とした真面目な労働者であり、AT&Tを務め上げた米国における父親像を体現するような人物です。スティーブ・バノンは父であるマーティー・バノンのような人々が米国を支えていると認識しています。

一方、スティーブ・バノンは一流大学を卒業、機関投資家であるゴールドマン・サックスで活躍し、自らの父とは対極にある米国内の特権階級側に所属する一員としての人生を歩みました。

この二人の人生が交錯した瞬間がリーマンショックでした。

父のマーティーがコツコツと積み上げたAT&Tの株価が下落・一夜にして財産を失った一方、スティーブは政府と癒着した一部の人々が何ら責任を取らずにヌケヌケと暮らす姿を金融マンとして目の当たりにしました。この際、バノンは父のような真面目な米国民を蔑ろにした米国の政治への深い憤りを持ったと伝えられています。

この後、スティーブ・バノンはオルト・ライト系とされるネットメディア「ブライトバートニュースネットワーク」との関係を強化し、同サイトをニュースメディアとして大きく飛躍させることに成功しました。

ただし、バノンをホワイトハウスに送り込んだ力はネットメディアの力ではなく、このときブライトバートニュースネットワークの飛躍を支えた、ある有力者の存在にありました。

マーサー財団とトランプの同盟、その同盟関係の代理人としてのバノン

米国には政治運動の資金面を富豪が設立した財団が支えることは珍しくありません。有名な財団はコーク財団などであり、主に共和党系連邦議員らに対して巨額の資金援助が行われていることで有名です。

トランプは大統領選挙の過程でコーク財団と対立・ムスリム入国禁止などの舌禍によって共和党主流派とも対立関係に陥ってしまい、大統領選挙で資金面・運動力面でヒラリーに対して大きく劣後する状況に陥りました。

トランプの苦境に手を差し伸べた存在がマーサー財団です。マーサー財団は共和党予備選挙で保守派の大統領候補者であったテッド・クルーズのスーパーPACへの巨額資金提供者であり、ティーパーティー運動や保守系シンクタンクなどへの資金提供者として近年存在感を高めてきた財団です。

バノンのブライトバートニュースもマーサー財団から10億円以上の資金援助を受けていたと報道されており、バノンとマーサーは政治的同盟関係にあったものと推測されます。

テッド・クルーズの予備選挙撤退後、マーサー財団は急速にトランプに接近し、その過程の中で財団設立者のロバート・マーサーがバノンをトランプに引き合わせました。

また、クルーズのスーパーPACの責任者は現大統領顧問のケリーアン・コンウェイが務めていましたが、同スーパーPACはトランプを支援するためのものに看板が架け替えられるとともに、コンウェイはトランプの選挙対策本部長に就任することになりました。

バノンとコンウェイの合流以降、トランプ選対に保守派の政治運動が結集し始めてトランプとヒラリーの支持率差は急速に詰まっていくことになりました。

ロバート・マーサーの娘のレベッカ・マーサーはトランプ政権移行チームの執行役員に選ばれており、バノンとコンウェイのホワイトハウス入りも含め、人事面・資金面の観点からトランプとマーサー財団が緊密な関係を維持していることが分かります。

トランプの黒幕は「共和党保守派」であって「バノン個人」とは言えない

共和党内では保守派の政治運動を基盤としている保守派、様々な利権構造に支えられた有力な政治家を基盤とする主流派の2つの派閥が権力闘争を繰り広げています。

現在までトランプ政権は大統領選挙の経緯を反映してバノンを含めた保守派の影響力が相対的に強い状況となっています。

ただし、トランプを支える政治勢力の中心は大統領選挙の途中からトランプ陣営に合流したレーガン大統領の流れを組む保守派の政治運動の担い手です。たとえ、バノンやコンウェイなどのマーサー財団と近い関係にある人々が論功行賞でホワイトハウスの重要な地位を占めていたとしても、その影響力の過大評価することは誤っています。

バノンは保守主義運動の中ではニュースサイト運営者に過ぎず、バノンの権力基盤はマーサー財団という保守系の一つの財団が支えているに過ぎません。共和党保守派全体から見た場合、あくまでも彼の位置づけは保守派の一角を占めている新参者の重要人物というだけです。

そのため、共和党保守派の政治勢力全体を指してトランプを支える黒幕と表現することは可能であっても、バノン個人を黒幕と表現する行為は小説であって分析はありません。

また、保守派と対立する主流派はバノンの動きを警戒しており、陰に陽にバノンを追い落とそうとする動きが活発化している状況があります。バノンとコンウェイを支える政治的な背景は他の保守派の人々よりも弱いため、ホワイトハウスや連邦議会の主流派、そして彼らに近いメディアがバノンとコンウェイをネガティブキャンペーンのターゲットにしています。

大統領選挙の過程で生まれた保守派と主流派の対立の関係を背景とし、その天秤のバランスを保守派側に傾けるためにバノンは一時的に保守派から同盟相手として認識されている状態であり、その地位は砂上の楼閣として表現できるものと思われます。

したがって、バノンが首席戦略官として国内政策に強い影響力を持ちながら、国外政策に影響力があるNSCの常席になったとしても、その権勢を過大に評価する論調に与することは誤りです。

スティーブ・バノン首席戦略官の扱いは共和党内の権力闘争のバロメーター

それにも関わらず、筆者はトランプ政権におけるバノンの扱いについては注目すべきと考えています。なぜなら、バノンの扱いは共和党内の勢力争いを測る指標となるからです。

仮に何らかの勢力構造の変化によってバノンがトランプ政権から追放された場合、その現象は従来までの保守派が更に勢力を拡大したのか、それとも主流派が勢力を盛り返しているのか、のいずれかを意味します。

逆に現状のままバノンの権力が拡大し続ける場合、それは保守派・主流派の両派の力が拮抗している状況であり、トランプ大統領の独自の権勢が勢力均衡下で拡大している状況にあることを示唆しています。

スティーブ・バノン首席戦略官はその人生、政治観、歴史観を含めて小説のネタとしては非常に魅力的な人物像を持った人物だと思いますが、その人間性からトランプ政権の性格を導き出そうとする行為はバランスの悪い論評だと思います。

米国政治について面白い物語を描くだけでなく、冷静に分析を加えていく目線が必要です。

<ワタセユウヤ(渡瀬裕哉)初著作のご紹介>


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yuyawatase at 14:24|PermalinkComments(0)米国政治 | 社会問題
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